工業会によると、豊作の理由は主に三つ。高齢化で担い手が減り続ける一方で農地の集約と機械化が進み、作付面積が1000ヘクタールを超えたこと。地下芽を食害するハリガネムシなどを防除する技術が向上して「株出し」栽培が増え、「夏植え」の栽培面積と並んだこと。台風の接近が少なく倒伏被害が減ったこと――が挙げられる。
増産に伴い、県や工業会、JAおきなわは需要喚起や新たな販路開拓を迫られている。
県内の産糖量は毎年8000トン程度で推移。20-21年は9556トンと豊作だったが、コロナ禍に伴う外食需要の喪失で在庫が2年分の産糖量に当たる1万6000トン発生した。

工業会によると、中国やタイを中心とした輸入黒糖と、沖縄と鹿児島・奄美の国産黒糖は、国内市場を折半する形でせめぎ合ってきた。一方、近年の円安で安価とみなされていた輸入黒糖に割高感が出ており、国産の追い風になっている。
西村真・同工業会専務は「サトウキビの生産や黒糖製造の現場では、離島の暮らしと領土を守る気持ちでやっている。担い手の高齢化もあるが、何とか黒糖を盛り上げ、離島の活性化につなげたい」と言った。
(栗田慎一)
JAおきなわ、『コク糖』レシピ提案
サトウキビのミネラルがそのままの黒糖を上手に使えば、料理のコクが深まる――。JAおきなわは、黒糖を活用した肉、魚、野菜料理、ご飯、麺、デザートなど70品を開発し、公式ホームページの「『コク糖』レシピ特集」に掲載している(写真は主な料理)。
沖縄の黒糖は、伊江島の他、伊平屋、粟国、多良間、西表、小浜、波照間、与那国の8島で製造。JAマーケティング戦略室によると、土壌や栽培法、製法の違いから島ごとに特有の風味があり、使い方もさまざまだ。
浜門由昇室長は「黒糖工場ではサトウキビの搾りかすを燃料にするなど持続可能な開発目標(SDGs)の最先端を行く。黒糖を日々の暮らしに取り入れてみてほしい」と提案する。