400年前に中国から琉球王国(現在の沖縄県)に伝来した黒糖。沖縄の離島の中で最初に製造が始まった同県伊江島で21日、「沖縄黒糖カレー」が初めて給食に登場した。
22日の「カレーの日」に合わせ、JA全農と大手食品・飲料メーカーなどで作る産地応援コンソーシアム「ニッポンエールプロジェクト」協議会が、黒糖を生産している県内の離島に学校給食用として黒糖を無償提供。伊江島など4つの離島で21、22日、カレーの隠し味に。
砂糖の原料となるサトウキビは、沖縄の農家の7割が生産する基幹作物だが、生産規模の小さな離島では上白糖は作れず黒糖の製造に限られる。しかし、黒糖を調味料に使う習慣は沖縄でもほとんどない。
「いつものカレーより甘い」「また食べたい」。全校児童104人の伊江小学校で、子どもたちが口々に感想を語り合った。黒糖で国境離島の暮らしを守り、国土を未来につなぐ。給食に込められた産地の願いだ。


「黒糖ってカレーに合うね」。21日に初めて沖縄の学校給食に登場した「沖縄黒糖カレー」の味に、沖縄有数の黒糖産地、伊江島の子どもたちが目を丸くした。「足元から消費を広げよう」。沖縄の離島4島の給食用黒糖903食分を無償提供した「ニッポンエールプロジェクト協議会」や産地関係者の決意も隠し味になっていた。
「クワッチーサビラ」。太平洋を見晴らす教室で、6年生12人の声が響いた。「ごちそうをいただきます」の琉球の方言。沖縄文化を守る教育の一環だ。
竹田百々花さんが「黒糖の塊は苦手だけど、カレーに入れるとおいしい」と言い、思案顔になった。「でも、どうやって作ればいいんだろう」
国産黒糖の9割を生産する沖縄だが、小さな塊をお菓子代わりにしたり、揚げパンに振りかけたりして食べるのが主流で、料理の隠し味として使う習慣はほとんどない。
東京から沖縄に移住したフレンチシェフ考案のレシピを基に、伊江村550食の黒糖カレーを作った学校栄養職員の宮里愛梨さんも「生まれて初めて食べてびっくりした」「甘味が最初に来て、こくとスパイシーさが追いかけてくる。給食に黒糖を活用し、使い道をもっと広げたい」という。

伊江島の学校には「15の島建(だ)ち」に向けた訓練がある。島に高校がないため、中学卒業後は全員島を出る。一人でもちゃんと生活できるよう、小学5年から中学3年まで年2回、自分で食材を買い、調理し、弁当を作り、学校で食べる。あっという間にたいらげた6年の大城奏裕さんは「黒糖を使った料理を弁当で挑戦しようかな」。
協議会は、島のサトウキビ生産者の思いなどを収録した映像を給食時間に映し、児童は生産者らへのメッセージをカードに記した。その姿を見た島袋洋校長が願った。「子どもたちが、伊江島の未来を作る人に育ってくれたらうれしい」
(栗田慎一)
<ことば> ニッポンエールプロジェクト協議会 2023年1月、JA全農と国産農畜産物の消費拡大や生産振興に関わる企業で設立。同じテーマで商品を開発・販売し、共同キャンペーンを行う。これまでに「宮崎県産日向夏」「長野県産りんご三兄弟」「東北産地」の応援を展開、「沖縄県産黒糖」は第4弾。