実家は栃木県益子町で、自然豊かな山の中で育った。まきを切って暖をとり、みそや調味料まで手作りするような家だった。
東京は、おいしいものはいっぱいある。だから、上京したばかりの頃は外食を楽しんでいた。でも、おいしいものはあふれているけれど外食を食べ続けていると、生きている実感が持てないと思うようになった。幼い頃は外食は特別な存在だった。日常になると「何かに生かされている」感じがした。
昔から命令や受け身がとても苦手で、そういう環境にあると「変えたい」と思うタイプだった。だから、自炊を楽しむようになった。そうしたら、外食も楽しくなった。
昔は山の暮らしが嫌で早く都会に行きたかった。田舎から抜け出したいと思ってきた。外食や買った料理の方が味も濃いし、分かりやすいうま味もある。お母さんが作る料理で味覚が育ったと思うし、今は山の暮らしの尊さを実感している。
こだわりは発酵食品。発酵という過程を経ただけで、こんなに姿形を変えたり、おいしくなり長持ちしたりする、発酵の力はすごいなと思う。
母にもらったぬか床は、1人暮らしなので野菜が余ると漬けている。それから、塩こうじやしょうゆこうじ、発酵玄米。日本のしょうゆ、酒、みりんなどの調味料を使った食べ物には奥深さがある。
食や農村に興味を持つ人は増えている。初回は私の食のこだわりを紹介した。次回から農業、農村や社会の在り方などを考えたい。