
短期肥育の鍵となる赤ぬかは、日本酒の醸造過程から出る副産物。広島県東広島市の賀茂鶴酒造から仕入れた。酒米の最も外側を削ったぬかを赤ぬかと呼び、内側のぬかよりも栄養価が高いとされている。同酒造と西条農高との関わりは2022年から始まった。
出品した牛枝肉は25カ月齢で、全ての出品牛の中で最も短い肥育期間だった。赤ぬかには、オレイン酸が豊富に含まれている。含有量が多いと口溶けが良いとされることから、赤ぬかの給与量や給与時期など研究に熱中。赤ぬかの給与が、肉質の高い和牛生産に有効的だと導き出した。川岡春菜さん(18)は「牛にとって一番良い飼料を考え、赤ぬかの研究を続けたことが結果につながった」と笑顔を見せる。
同酒造は「西条農高の受賞は地域でも盛り上がった。栄養価の高い赤ぬかで牛の短期肥育に成功し、肉質の改善につながった。将来が楽しみ」と喜んだ。
総合優勝を機に生徒の“和牛愛”が一層強くなっている。子牛から繁殖用の雌牛を育てる肉牛班の遠藤雪鈴さん(17)は「将来は立派な広島和牛を生産する母牛になってほしい」と目を輝かせる。
内城粋咲さん(18)が育てた牛は、広島県を代表する種雄牛「神竜粋吹」として登録された。「自分の名前から一字取って名付けた」と愛情込めて育てた牛に誇りを持つ。
牛と関わる中で将来なりたい姿も見えてきた。「牛がほのぼのと日陰で休んだり、元気に走り回ったりする姿が好き」と牛への愛情をのぞかせた内城心粋さん(18)は、「母校で畜産担当の教師になりたい」と意気込む。
来年の和牛甲子園への出品牛は内城心粋さんが育てた。先輩の思いや研究を受け継ぎ、後輩たちに総合優勝連覇を託す。