世界中で注目を集める日本のアニメや漫画。作品の多くで舞台となっている「学校」を外国人が疑似体験できるのが千葉県君津市にある「君ノ高校」だ。制服や授業はもちろん、地元食材を使った給食も提供し、あこがれの学園生活をかなえている。

「キヲツケ、レイ!」
ブラジル国籍のレアンドロ・エイジ・ウメズ・バチスタさん(39)が号令をかけると、学ランやセーラー服に身を包んだアジア系の男女が頭を下げた。
7人は日本の大学院や語学学校、企業に在籍する20~30代。エイジさんは祖父母が日本人で、日本の学校に興味があったと言う。
同施設は団体向けに運動会を企画する「運動会屋」が、閉校した旧亀山中学校に2023年に“開校”した。交流サイト(SNS)などの口コミで評判を呼び、これまでに200人以上の外国人が入学している。

正午を告げるチャイムが鳴ると、待ちに待った給食の時間。「I have looked forward to school meals!(給食が楽しみだった)」の声が響く。
スタッフが教室に食缶やアルマイト製食器を運ぶと、香港出身の呉綽然さん(37)が驚いた様子で言った。「香港は弁当配達が主流。食事をシェアするのは家族みたい」

献立は県産の豚肉やニンジン入りのカレーや揚げパン、コーヒー味の麦芽ゼリー、千葉名物のピーナツみそ、ビン入り牛乳。カレーは君津市の給食レシピを参考に、白ワインなどを入れ、まろやかな甘口に仕上げた。
モンゴル国籍のオトゴンバートル・オユンフーさん(28)は「母国の給食の羊肉料理が好きだった」と遠い目に。

授業は英語で進み、「社会科」では模造刀で殺陣、「体育科」では玉入れなどに挑戦。書道では、筆の扱いに苦戦する人が続出したが、中国籍の王馨曼さん(24)は「母国の漢字と違う。面白い」と達筆な字で「愛」を書く場面もあった。生徒が自ら行う清掃は、全員が「学校では初めて」と目を丸くした。
日程を終え卒業証書を手にした中国籍の朱●暢さん(24)は「文化が違うってすてき。中国のことも知ってもらいたいなあ」
編注=●はさんずいに「宣」
(文=佐野太一、撮影=鴻田寛之)
▽君ノ高校での1日▽















