卸やスーパー、生協、百貨店、外食など41社から回答を得た。
24年の国産果実販売の商機になる場面(複数回答)は、「規格外などエシカルを打ち出した値頃感のある果実の販売」がトップ(51%)となった。23年の記録的猛暑でリンゴやミカンは着色不良や小玉化が著しくなり、規格外品が増えて品薄高傾向が続いた。物価高による節約志向で、外観不良でも食味が良好な「値頃感のある果実の引き合いが強まっている」(小売り)。
ロスを減らし、持続可能な生産を後押しする意義と、外観の悪さが食味に影響しないことなど、情報発信で消費者への継続的な理解の促進が求められる。
2位は「円安により好調な輸出」と「高騰する輸入果実の代替需要」が46%で並んだ。世界的な物価上昇で海外産との価格差が縮まっており、国産のシェアを高める好機だ。
試食・SNS宣伝効果的
果実の消費喚起策として有効なPRの設問(複数回答)では、「試食宣伝や販売促進員による売り込み」がトップ(66%)。新型コロナウイルスの5類移行で復活しつつある試食宣伝は、味の良さを消費者が実感でき、「即効性がある」(青果卸)と再評価された。
「SNSによる宣伝」(37%)が2位。果実離れが進む若者世代の利用率が高く、拡散力があるSNSを活用した情報発信の有効性に期待する流通関係者が多い。対面とオンラインの両輪での販促がキーワードになる。

シャイン需要増 赤・黒系期待も

増産が進むブドウ「シャインマスカット」について、需要見通しは「(前年より)一定に増える」が最多の51%を占めた。ただ「横ばい」が34%、「減る」も12%あり、見方が分かれる。23年産では出回りが増え相場が一時的に低迷した。同時に贈答から家庭用、加工用途まで消費の裾野が広がる契機になるなど、今後の動向が注目される。

「シャインマスカット」の次にヒットしそうな果実も尋ねた。ブドウでは赤系「クイーンルージュ」や黒系品種を挙げる声が目立った。温暖化で着色しにくい赤・黒系の生産が減っており、巻き返しへの期待が高い。小売りからは、種なし皮ごとブドウ品種で「3色」展開したい意向がうかがえた。
<記者の目>
物価高騰下でも値頃感を出せるとして規格外品を含めたエシカルな果実への注目度は高い。従来は規格外だった小粒ミカンを糖度の高さを前面に出して販売した事例もあり、工夫次第で価値を高められる。一方で多くの産地は、食味や外観ともに優れた果実の生産体系を確立している。規格外品の販路の確保はあくまでも救済措置であり、まずは産地が目指す高品質果実の国内消費拡大に向けた取り組みが、国産果実の産地振興には求められる。(永井陵)