
和食材766商品展開
カルディの店内に入ると、約3000点に及ぶ食品が迎える。背の高い商品棚を縫うように店内を歩くと、掘り出し物を見つけたくなる。コーヒーやワイン、トマト缶、加工食品や調味料などさまざまな輸入品が並ぶが、一角に「〇〇県産」などと包装が日本語表示の商品群が見える。
運営会社・キャメル珈琲は、グループ会社。もへじを通じてオリジナル和食材ブランド「もへじ」を2006年から始めた。「世界各国の食材を取り扱う中で、日本国内にある数多くのおいしい食材に目を向けたい」との考えだ。商品数を年々増やし、現在は北は北海道、南は沖縄まで全国各地の特産品を使った商品を数多く展開している。24年度は766種類(通年164種、期間限定602種)の商品を販売した。「もへじ」ブランドの商品は、「食への関心が高い30~50代の女性を中心に幅広い層から支持を得ている」とする。

沖縄県産シークヮーサージュース
数あるヒット商品の中で同社が主力として挙げるのが、沖縄産シークヮーサーのストレート果汁を使用したジュース「もへじ 沖縄県産シークヮーサー果汁100%」(360ミリリットル・1058円)だ。炭酸水などで割る飲み物以外でも、揚げ物や焼き魚にかけたり、ゼリーや寒天などのデザートの材料にも使ったりと汎用性が高い。
09年の販売開始当初は夏季限定商品だったが、リピーターなどからの声を受け、現在は通年販売になったという。販売数は増加傾向で24年度は3年前の1・6倍となる46万2000本売り上げた。同社は人気の理由を「発売当時の珍しさや沖縄産シークワーサーのおいしさ、健康志向の高まりが背景にあった」と分析する。

産地の「地元メーカー」支える
全国に500店舗以上展開するカルディ店舗へのもへじブランド商品の供給はどのように実現しているのか。支えるのは産地と地元メーカーとの連携だ。
同商品は原料産地の地元企業である飲料メーカー・沖縄アロエ(沖縄県名護市)が相手先ブランドによる生産(OEM)で製造。契約生産者やJAおきなわからシークワーサーを調達し、瓶詰まで行う。もへじは商品製造において現地での加工を必須条件とはしていないが、「原材料の産地で一次加工ができれば、原料輸送コストや鮮度保持などの面でメリットがあり、商品開発もスムーズに進めやすい」と話す。
沖縄アロエは、「(キャメル珈琲グループのような)全国に店舗を展開し発信力のある企業との取引は安定した需要が見込める」とし、「生産者のモチベーション維持にもつながっている」という。生産者の高齢化などで原料の確保が難しくなる中、「JAとの連携も重要視している。今後も地元特産物の安定生産・販売拡大に向けて産地全体で協力していきたい」と話す。
産地が特産品の知名度向上や販路拡大へ、全国展開する小売りの販売チャンネルを活用することは有効に映った。カルディのように、地域性や季節感といった付加価値を打ち出したい大手小売りが増えている。小売り側は食品の安定した調達を進める際に、集荷力のある団体と地場産品の魅力を高める加工メーカーといった地域内での連携に期待していた。JAのように地域に根差した事業体が注目を集めている。
(永井陵)