プロテイン商品の市場が拡大している。商品を通じたタンパク質摂取の目的が、従来の筋肉増量に加えて、健康や美容など多様化したことが背景にある。コストを理由に輸入原料を使用する商品が依然多いものの、差別化を目的に国産ホエー(乳清)を採用する動きが出ている。需要の広がりに期待がかかる。
国内のプロテイン市場は、タンパク質補給ブームで新規利用者の獲得が進み拡大が続いている。民間調査会社の富士経済によると、23年の市場規模は前年比7・6%増の1190億円、24年はさらに8・6%伸びて1292億円と見込む。業界団体の日本プロテイン協会は、商品の多様化により市場は今後も拡大すると予想する。
女性をターゲットとした美容目的でプロテインを訴求するのは、SOLEIL(ソレイユ、東京都渋谷区)。国内初となる果実粉砕入りの美容プロテインを販売する。同社は「メインターゲットの30~50代女性はタンパク質の摂取が不足している」と指摘。ダイエット中や子育てで自分の時間が取れない女性に対して、1食で十分な栄養素が摂取できるよう成分設計する。1パック16食相当で価格は2900円。「タンパク質摂取に対する世間の認識は変わりつつあり、特に運動をしない層でも美容や健康維持のためにプロテインを飲みたいといった声が大きい」(同)とする。
プロテインパウダーの原料は、主にホエーと大豆に分かれる。ホエーはヨーグルトやチーズを作るときに生まれる液体状の副産物で、粉末状にするコストが高いため廃棄されることが多い。そのため、国内で出回るプロテインパウダーのほとんどが輸入原料を使用する。国産原料を使用する動きも出ている。
武内製薬(東京都品川区)とJA全農は国産ホエーを原料としたプロテインを共同開発した。国産農畜産物の消費拡大を促す全農の商品ブランド「ニッポンエール」の一つで、「THE PROTEIN×ニッポンエール 十勝あずきミルク風味」と、「同 宇治ほうじ茶ラテ風味」の2種類(各1キログラム3980円)を展開。「国産ホエーは輸入品と比べて乳の風味が強く感じられる」(武内製薬担当者)ことから、相性の良い和テイストな味にした。8月から電子商取引(EC)サイトで販売をはじめ売れ行きは好調。売り切れが出るサイトもあるほどだ。「プロテインの味としては珍しい和テイストが消費者に理解された」(同)と分析する。
日本農業研究所の矢坂雅充氏は「国産ホエーは粉末状にするコストがかかり輸入と比べて高価なことで需要が広がらなかった。しかしプロテイン商品が多様化する中で、原料として国産ホエーに着目する動きが出ている」と指摘する。
(廣田泉)