管理受託農園の一つで杉並区にある、すぎのこ農園は、行政が運営する東京23区で初めての農福連携農園。2019年3月に同区が区民農園だった農地を購入した。
福祉分野と連携するため、同年4月から運営を開始し、21年4月、管理棟の完成で全面開園した。
管理棟はJA組合員の生家で、江戸時代中期に建てられたとされる農家の部材を活用して整備された。農の風景に溶け込むような木造平屋建て(延べ床面積約161平方メートル)は、畑と共にかつての「杉並の農の風景」を創出し、農園のシンボルにもなっている。

福祉の面では、障害者等福祉施設などの団体利用向けに種まき、作付け収穫など一連の農業体験をサポートする。障害者の雇用に向けた取り組みを支援するため、職場実習を受け入れ、就労準備訓練の他、中学生の職場体験にも協力している。
さらに、障害者が地域で余暇活動などを楽しめる場所として管理棟を開放している。月に1度開く「すぎのこマルシェ」では、区内農家らが栽培した新鮮な農産物や花を販売するのに加え、障害者施設で利用者が心を込めて作ったパンや菓子、雑貨などを販売し、にぎわいを見せている。
今後は、都市農地の持つ多面的な機能を発揮する農福連携事業を展開していく。具体的には、高齢者施設利用者を対象にレイズドベッド(地面からかさ上げした花壇)を活用した園芸活動による生きがいの創出や、教育委員会と連携して不登校支援事業の場として活用することなどを計画している。