北海道のJAいわみざわは、加工用トマトの増産を進めている。2020年に5戸が7・4ヘクタールで始めた栽培は、24年には21戸、約45ヘクタールと大幅に拡大した。21年には食品メーカーのカゴメ、農機具製造販売元のヤンマーアグリジャパン北海道支社との3者で、産地拡大に関する協定を締結。大手事業者と手を携え、一大産地としての確立を目指す。
JA管内は約1万8000ヘクタールの耕作面積があり、水稲、小麦、大豆、タマネギなど多品目が生産されている。しかし、近年は少子高齢化による担い手不足や離農が相次ぎ、労力負担が大きい品目の生産が減少。機械化が可能な品目の選定を必要としていた。
カゴメはこれまで、関東を中心に加工用トマトの自社での栽培や契約栽培に取り組んできた。しかし、収穫期の高温や高齢化による離農が進む状況を踏まえ、耕作規模が大きく作業効率の良い東北や北海道での栽培を模索していた。

その中で、昼夜の寒暖差や日照時間の長さが栽培に適しており、広大で平たんな土地があり、機械導入もしやすいなど、条件がそろうJA管内に着目。生産者は全量を同社が買い取る取引の安定性に加え、適正な輪作体系の維持に向け、ナス科の露地作物導入にメリットを感じ、本格生産を始めた。
初年度は関東よりも冷涼な北海道に適した栽培ノウハウが全くなかったこともあり、苦戦を強いられた。管内で先駆けて加工用トマト栽培に取り組む岩瀬孝雄さんは、「1年目は分からないことが多過ぎて、取りあえず言われた通りに栽培してみようと挑戦した」と率直に話す。一年を通じて感じた課題を洗い出し、次年度以降は改善を繰り返した。
年数を重ねて栽培を徐々に軌道に乗せ、現在ではJA管内で最も広い栽培規模に拡大。今では栽培を始める生産者を自身の畑に招き、作業の流れや収穫機の操作方法など、栽培ノウハウを伝えている。
岩瀬さんは将来、道内に加工施設ができることを期待している。「より新鮮なトマトを加工でき、新たな雇用を生み出して地域の活性化にもつながる」と今後の展望を語る。
3月中旬には、JAとカゴメが協力し、品質・収量の向上や安全なトマトの生産に向けた栽培講習会を開催。加工用トマトの一層の生産力向上に期待が高まる。