JAおきなわは、地元農産物を活用した新たな観光資源の開発に乗り出した。第1弾は今帰仁村のスイカだ。甘さで勝負するため、選果施設に新たに糖度センサーを設置。本島北部の村から、スイカで全国区という未来への挑戦が始まった。
同村は、通年でスイカを出荷できる国内でも希少な産地だ。若手も多く、30代が生産部会役員を担う。しかし、スイカ灰白色斑紋病の発生で最悪の場合、無収入となることに農家は悩まされていた。経営リスク回避のためニガウリ(ゴーヤー)などに転換し、後継者は減少傾向で、産地衰退の危機感が漂っていた。
そんな時、村内などにテーマパークが新設されることになった。地元農産物の観光資源化を検討していたJA特命プロジェクト推進室の白坂進一室長は「これはチャンス」と、観光客向けカットスイカの商品化を生産部会に提案した。

従来は1玉で出荷していたため、「最初はピンとこなかった」と、JA今帰仁支店ハウススイカ生産部会の上間翔副部会長は振り返る。そこで、部会員やJA職員、名桜大学生らがプロジェクトチーム(PT)を結成。若者受けを意識し、2・5センチ大のカットや、レンタカーの車内で食べやすいよう、容器をカップ型にして、価格は一つ500円にすることなどを決めていった。
糖度の高さを目玉とするため、JAは内閣府の補助事業を活用し、糖度計などを導入した選果ラインと加工施設を昨年10月に整備した。糖度の基準は、時期によっては12・5以上。カットなら、味は十分だが外観に問題があるスイカも活用でき、規格外を減らせるため、農家所得の向上につながる。
PTで1年半かけ検討し、納得のいく商品が完成した。「今帰仁すいきゃ」というネーミングは、部会員とJA職員の投票で決め、ラベルのデザインは部会員の知人のデザイナーに依頼した。一から全て、PT全員で作り上げた。

発売から半年、JA直売所などでの販売を通して、売ることの難しさを実感しながら、消費者の反応に手応えをつかみつつある。今後、事業の自立に向け売り場確保などが求められる。「スイカは夏のイメージ。だが、今帰仁産は冬と春に糖度が高く、おいしい。そのPRにつなげたい」と上間副部会長の妻の泉穂さんは意欲を示す。南のスイカ産地の挑戦は始まったばかりだ。