オリジナルの料理も多かったんですよ。料理の本などを見るよりも、自分の経験などを踏まえていろいろと作ってみるんです。それが皆、おいしくて。食べてみて「これはないな」と思ったものは一つもありませんでした。
私が特に好きだったのは、野菜がたっぷり入った煮物。子どもで煮物好きなんて珍しいですよね。それだけおいしかったわけです。
私は甘い物が大好きでした。そこで母は煮物の味付けを甘くしてくれたんですが、砂糖ではなくタマネギなどの野菜を使って甘味を出したんですね。いろいろと工夫をしてくれていたんです。
とてもおいしいからいつも家族全員でたくさん食べるんですが、それでも残るくらい大量に作っていました。それで翌日の朝、残った煮物を細かく刻んで、卵焼きの中に入れるんですよ。朝ご飯だけでなく、お弁当のおかずとしても作ってくれました。これがまたすごくおいしくて、友達からも人気だったんです。
中学のお昼時間、私は友達とおかずの交換会をやっていました。母の作るおかずはなんでもおいしいから、私、けっこう取られたんですよ。そのため大きなお弁当箱にたくさん詰めて持って行ったり、お弁当箱を二つ持って行ったくらいです。
母は時間があると、夕飯の後でもずっと台所に立って、次の日のお弁当の支度や、次の日の夜の支度をしていました。
子どもの頃は当たり前だと思っていましたが、自分が親元を離れて初めて、働いた後で食事の用意をするというのがどれだけ大変なことか、そのありがたみが分かりました。
私も、母がしてくれたように自分の家族の健康のために、工夫をした料理を作ってあげたいと思っています。でもなかなか難しいことだと実感してますね。
うちは、主人と15歳の娘の3人家族。主人はミュージシャンなので仕事が不規則な上、外で食べる機会が多いんです。そのため家で食べる料理は、塩分控えめ、野菜を多めにと心がけています。砂糖も一切使わず、みりんを使ったり、野菜の甘味で代用しています。
できるだけ家族3人で食事をしたいのですが、その機会はあまり多くありません。主人が家で食事をする時は、主人メインの料理を作ります。魚が好きなので、魚と野菜をたくさん使った食事。主人はいつも完食しますし、「おいしかった」「ありがとう」と言ってくれますので、作りがいがあります。
娘と二人で食べる時は、完全に娘寄りの食事。カレー、シチュー、スパゲティなどです。
うちのカレーは、キノコがほとんどを占めています。
娘はキノコが苦手なんですね。野菜炒めや汁物に入れても、どうしてもキノコをよけてしまう。でもカレーに入れると、ちゃんと食べるんですよ。それが分かってからは、カレーの具はほぼほぼキノコ。エノキタケ、シメジ、シイタケ、エリンギ。
他にはタマネギとひき肉だけです。タマネギをすごくたくさん入れて、時間をかけて炒め、煮るんです。さらに追いタマネギといって、ある程度調理が進んでから、新たにタマネギを入れるんですね。最初のタマネギは完全に形がなくなってしまいます。追いタマネギの方で、食感を楽しむんです。
娘と主人に笑顔になってもらいたいとの気持ちで、料理を続けています。母のやっていたレベルにはまだまだたどり着けませんが、少しでも近づきたい。その思いで作ると楽しく感じられます。
あさか・ゆい 1969年、宮崎県出まれ。84年、ザ・スカウトオーディションの浅香唯賞を受賞し、翌年「夏少女」で歌手デビュー。80年代を代表するアイドルとして一世を風靡(ふうび)した。ドラマ「スケバン刑事● 少女忍法帖伝奇」、映画「YAWARA」、ミュージカル「アニー」など俳優としても活躍。6月17日に大阪、同24日に横浜のビルボードライブで「浅香唯 Billboard Live 2023」を開催する。
編注=●はローマ数字の3