日本で通った小学校では給食がなくて、お弁当だったんです。でもスウェーデンに行ったら、給食だったんですね。私にとって学校給食は、スウェーデンでの1年間だけです。 給食で強烈に印象に残っている料理があります。1カ月に1回か2回、牛のプディングというのが出たんですね。何日にはどういう料理が出るという案内があるんですが、牛のプディングという文字を見て、クラスの子たちは、「この日は駄目だ」と言うんです。最初私はどういう料理か分からなかったので、どうして嫌がるんだろうと感じました。
出てきた牛のプディングは、真っ黒なステーキのようでした。スウェーデンの人は、ステーキでもミートボールでも肉料理はコケモモのジャムと一緒に食べるんです。牛のプディングにも添えられていました。
ジャムを付けて食べてみたらまずくはないんですけど、その中身を聞いたら……。牛の血だけを固めステーキ状にしたんだそうです。たぶん鉄分の補給のためなのでしょう。どこの学校でも出していたみたいです。これは恐怖の給食でしたねえ。
スウェーデンでの食の思い出として、もう一つ。個人が所有する森であっても、自由に入って木の実やキノコを採っていいんですよ。そこで初夏にはベリーを採ってジャムを作ったり、アイスクリームにいっぱい入れて食べていました。8月は向こうでは秋になるんですが、カンタレーラというキノコをよく食べました。黄色くて、すごく香りがいい。それをバターで炒めて、生クリームを加えるんです。私たちはちょっとおしょうゆも入れてソースにして、豚肉と食べたり、パスタにしました。
自分で採ってきたものを食べる経験は、日本でもあります。小学校の頃、母が仕事で忙しかったので、東京・町田に住む祖母の家でご飯を食べることもありました。当時はまだ町田の辺りにはつくしがたくさん生えていたんです。私が採ったつくしを、祖母が炊いたり、卵とじにしてくれました。祖母の手伝いもしました。楽しかったですよね。いろいろと教えてもらい、新鮮でした。
私は17歳の時に引っ越して1人暮らしを始めました。それを機に、自分は和食が好きだということに気が付いて。それでいろいろ作るようになりましたね。これはいけると思ったのは、豚汁。ちょっとごま油を入れて食べるとなかなかでした。
ある時期から健康を意識するようになり、食生活を見直してみました。玄米を食べてみたんですが、どうも私の体には合わないようでした。その後、発酵玄米に出合い、これは自分の体質によく合うことが分かりました。それからは基本的に家では発酵玄米を炊いて食べています。
発酵食に興味が湧いたので、サロンの仲間の方々とみそ造りをしたこともあります。こうじの専門の方に指導を受けて造ったんです。自分で造ってみるのは楽しいし、出来上ったみそはとてもおいしくて。同じ材料で同じ環境で作ったのに、作る人によって全部違う味なんですね。そのあたりも面白いと感じました。
漬物も、自分のぬか床で漬けています。カブやキュウリで作ることが多いんですが、アボカドもいいですね。ちょっと硬いやつを買ってきて皮ごと3、4日漬けると、軟らかくなって。塩気があっておいしいんですよ。
ですから私の朝食は、茶色いものばかり。粗食でいいんです。
実は白米も大好きなんです。私にとって、発酵玄米は普段の食事で、白米はハレの日に食べる感覚です。まれに白米を食べると、それはそれで喜びを感じます。
かわかみ・まいこ 1966年、スウェーデン生まれ。80年、NHKドラマ人間模様「絆」でデビュー。同年のドラマ「3年B組金八先生」で注目される。女優業の傍ら、ガラスデザイナーとしても活動する。2月24、25日、東京・池袋のサンシャインシティでの「ラブリーにゃんフェスタ」にブース出展し、25日にはトークショーに出演。28日から東京・松屋銀座で個展「ねことガラス展」を開催する。