娘は10歳になりました。ですからこの10年は、食事は僕と奥さんのどちらかが作ってきたわけです。朝は僕の担当です。ご飯とみそ汁、目玉焼きとかを作っています。あと僕は納豆が好きなので、必ず納豆。
朝ごはんで変化をつけるのは難しいですね。みそ汁は、豆腐、油揚げ、台所にある野菜やキノコを使って作ります。それと最近発見したんですけど、「松山あげ」という松山で作られている油揚げがいいんですよ。パリッパリに硬くて、強く持つとポロっと割れちゃうような感じなんです。これを細かく切って保存しておいて、鍋にポイっと入れるとすぐに油揚げになるんですね。
でも納豆はぜいたくをしたい。大豆は必ず国産でないと駄目ですね。豆腐も同様で、国産大豆を使ったこだわりのものを食べるようにしています。野菜も国産のいいものを食べたい。家族の体を作るものですから、ここは譲りたくないんです。
喫茶店も、ちょっと高くてもいい店に入ります。僕は自宅で仕事ができない性質なので、毎日のように喫茶店で仕事をするんです。僕が通っている喫茶店のコーヒーは、近所の中で一番高い。一番安いカフェの倍くらいするんですが、高くてもいい環境で過ごしたいと感じます。
シナリオを書いている間は、昼は必ずカレーと決めています。シナリオを書き終わるまで毎日カレーなんですよ。それが嫌だから書くんです。ちなみに締め切りの日は、必ず「ココイチ」で食べます。ここ一番!という勝負の日ですからね。
京都に行ったら「華祥」のチャーハンと「マルシン飯店」のギョーザを必ず食べる。神戸なら新長田駅そばの「元祖平壌冷麺屋」の冷麺。2017年に神戸市長田区で「れいこいるか」という映画を四季ごとに1年かけて撮影したんですが、冷麺を食べるついでに神戸で撮影をしていたようだとスタッフと笑いました。
記念日に食べるものも決まっています。僕の誕生日に食べるのはサンマ。結婚記念日は、両家が顔合わせしたのが大阪・新世界のフグ料理店「づぼらや」だったこともあって、毎年フグを食べるようにしています。奥さんの誕生日は、彼女がエビ好きなので、オマールエビを奮発して1尾買ってきて、僕が蒸して料理します。付け合わせは、やはり彼女が好きな緑と白のアスパラガスです。娘の誕生日は、必ずカニ。
食のこだわりが、頑張る原動力になっている感じがします。食べ物のエネルギーってすごいですよね。
(聞き手・写真 菊地武顕)
いまおか・しんじ 1965年、大阪府生まれ。瀬々敬久、神代辰巳監督らの助監督を経て、95年に「彗星まち」で監督デビュー。2011年にクリストファー・ドイル氏を撮影に迎えた日独合作映画「UNDERWATER LOVE~女の河童~」を発表。「れいこいるか」は、映画芸術2020年日本映画ベストテンで第1位に輝いた。監督最新作「愛のぬくもり」公開中。脚本を担当した「化け猫あんずちゃん」が7月19日公開。