農研機構は15日、無人で自動走行する軽トラックを開発したと発表した。全地球衛星測位システム(GNSS)の位置情報を利用する。埼玉県鴻巣市で同日、実演会を開催。遠隔操作でき、無人で圃場(ほじょう)間を移動できる自動走行トラクターも公開した。同機構によるといずれも世界初で、実用化に向けて実証を進める。
無人自動走行の軽トラはタブレット端末で操作する。事前に地図データ上に経路を設定し、GNSSの位置情報を基に走行。位置情報の精度が落ちる中山間地域などでも走行できるよう、道路を検知するカメラやセンサーも付けた。目印となるポールを経路に立てることでも走行できる。
自動車メーカーのスズキ、地図情報会社のゼンリンと共同開発。現場から開発ニーズが強かったという。収穫物や荷物の運搬などでの利用を想定する。タブレット端末から、車体搭載カメラの映像や走行位置、走行状況を確認できる。現段階では、ギアは一速固定で、時速は20キロまで。交差点や圃場の入り口では一時停止する。

遠隔操作できる35馬力の小型自動走行トラクターも初公開した。従来の自動走行トラクターは圃場で操縦者が監視する必要があったが、無人軽トラと同じシステムを使い、耕うんなどの作業や圃場間の移動を離れた場所から操作できる。障害物を検知し走行を停止する機能も備える。
今回発表した軽トラやトラクターについて、同機構は「労働力不足解消や生産性向上に貢献する大きな一歩」とする。
ただ、実用化や市販化の時期は未定だ。道路交通法上、現時点では無人農機の公道走行はできないが、農道では一般車両の通行止めなどの手続きをすれば可能。今後の公道走行解禁を視野に、同機構はメーカーなどと農家の圃場での実証を進める方針だ。