田植え1回 収穫2回 ひこばえ実らせ再生二期作 合計収量10アール950キロ 温暖化逆手に農研機構開発
福岡県筑後市の水田で2021、22年に試験した。1作目は、4月中旬に移植し8月上旬に収穫する。この時、地際から40センチほどで高く刈り取る。追肥して再び入水し、ひこばえから穂を実らせ、10月下旬に2作目を収穫する。10アール当たり収量は2年間の平均で、1作目が約600キロ、2作目が約300キロ。21年は合計1016キロと1トンを超え、県内の米平均収量の2倍に上った。
移植時期や1作目を刈り取る高さを変えて試験し、4月中旬に移植して高く刈った場合が、最も収量が高かった。地上部に残された栄養分が多いほど、2作目の穂数やもみ数が増える。食味は、1作目と2作目で変わらないことも確かめた。
1作目の高刈りと、2作目は稈長(かんちょう)が短くなるため、収穫には汎用(はんよう)コンバインが必要になる。1作目の収穫時にクローラーで株を踏んでも、ひこばえは発生する。2作目は、用水の確保、追肥の時期や量の調整、トビイロウンカなど病害虫対策などにも留意が必要。寒くなる前に収穫するため、同品種など早生で多収の品種が向くという。
関東以西で可能
同機構は今回の技術について、試験地の福岡県と同様の温暖な地域であれば、関東以西で可能とする。海外では、より温暖な中国南部などで盛んに行われているという。同機構は「地球温暖化が進む中で、普及していく可能性がある。高温を利用し、適応する技術だ」(九州沖縄農業研究センター)と話す。
同機構は同様の技術を飼料用米で発表しており、主食用品種では今回が初めて。(古田島知則)