同病院の医療圏は8市町村で、その面積は愛知県とほぼ同等。1日当たりの平均外来患者数は559人、同入院患者数は139人で、農業を基幹産業とする地域の命を支える医療機関だ。
稲葉聡院長は「広い北海道で人口の少ない地域医療を守ることが私たちの根本。特に急を要する治療を最低限維持することが使命だ」と力を込める。
ただ、物価の高騰が病院経営に影を落とす。診療報酬は公定価格で、コスト増を転嫁できないため病院の事業収支は厳しさを増す。例えば、光熱水費でウエートの高い重油代は、原油高を背景に2年前に比べ20%以上も上昇。給食運営費も5年前から7%上昇した。いずれも病院運営に不可欠なコストで、削減に有効な対策はない。
高柳直明事務部長は「一般家庭と同じように節電、最低限の暖房など可能なことに努めているが、限界がある」と指摘する。
厳しさを増すのは物価高騰だけではない。人手の確保が喫緊の課題だが、地方の医師や看護師は不足。医療従事者の使命感に依存し続けることにも限界がある。
24年度は医療、介護、障害福祉サービス報酬を同時に見直す「トリプル改定」に当たる。稲葉院長は「医療に地方切り捨てがあってはならない。実情に合った制度や仕組み改定などが必要だ」と訴える。