[論説]各県の総合防除計画 農家へ周知・指導丁寧に
総合防除計画は、昨年4月に施行した改正植物防疫法に基づくもので、各都道府県で順次策定し、今年3月末までに出そろった。化学農薬に耐性のある病害虫の増加などを踏まえ、農地の排水性改善でまん延しにくい環境を整えるなど、化学農薬に依存しない総合防除の推進を目指す。防除の対象となる指定有害動植物やその防除方法、異常発生時の対応などを盛り込んだ。
計画の一つの柱が、「順守事項」だ。県が必要に応じて計画に盛り込み、特に影響が大きい病害虫を選んで農家が取り組むべきルールを定める。農家がルールを守らず、病害虫がまん延して農作物に重大な損害が出る恐れがある場合、県は農家に対し、勧告・命令ができる。従わないと最大30万円の過料が科される。
順守事項を定めたのは青森、茨城、千葉、愛媛、長崎、佐賀の6県。茨城と千葉は、南九州を中心に猛威を振るった経緯がある「サツマイモ基腐病」で定めた。サツマイモは両県の主要品目であり、発生時の損害が大きいとみて発病株の適切な処分、発生農地では原則2年作付けないなどをルールとした。
長崎と佐賀の両県は、水稲の「トビイロウンカ」と「いもち病」が異常発生した際の対応でルールを定めた。農家個々の防除では成果が出にくいことから、地域での一斉防除などを盛り込んだ。長崎は「ハスモンヨトウ」、佐賀はタマネギの「べと病」についても定めた他、青森はリンゴの「モモシンクイガ」、愛媛はかんきつの「ミカンバエ」で設定した。
順守事項は産地を守るためのものだが、最終的に過料につながる可能性があり、慎重で丁寧な運用が求められる。過料までには、県が①ルールに即して防除するよう指導・助言②防除が行われず作物に重大な損害が出る可能性がある場合、防除を勧告③正当な理由なく勧告に従わない場合、改善を期限付きで命令――という段階があり、最後に命令に違反した人に30万円以下の過料となる。こうした仕組みを、まずは現場に周知することが重要となる。
順守事項を定めた県からは「日常の丁寧な指導や助言で対応したい」との声が上がる。対象病害虫は発生、まん延すれば産地への影響は大きい。日頃からの指導、助言により、病害虫の発生、まん延を未然に防ぐことが欠かせない。