隣り合う水田を横断するように長さ数メートルの亀裂が走り、畦畔(けいはん)も大きく崩れている──。石川県珠洲市の水田も、深刻な被害が出ている。
「こんな状態で春から田植えができるのか」。米など130ヘクタールを手がける農業法人すえひろの末政博司代表は頭を抱える。
補修工事を頼むにも道路や家が優先され、農地は後回しになるとみられる。農地を見て回る余裕がなく、詳しい被害状況は分からないが、「至る所にこうした被害があるのではないか」(末政代表)。
能登町の山間部では、山崩れによる土砂や倒木が流入した水田が見られる。米15ヘクタールを作る的場清一さん(73)によると、陥没ができて車が通れなくなった農道や、亀裂が入った用水路もあるという。
的場さんも、自宅と避難所を行ったり来たりする生活で、まだ様子を見に行けていない農地もある。「大きな被害が出ていないといいが」と心配する。
県内では農地に水を送る地中の送水管(パイプライン)が損傷している恐れも強い。県土地改良事業団体連合会は「水道管が壊れ、県内で広く断水が発生する中、農業用の送水管だけ無事とは考えられない」と指摘する。水が届かなければ農地が復旧しても米作りを断念せざるを得ない。
県によると、今回の地震による農業被害は12日午後2時時点で農地が33件、用排水路や送水管といった水路が32件。ただ、被害が大きい能登半島北部は調査できる状況になく、被害の全容把握には程遠い状況だ。
高齢化が進む中、いったん米を作らなくなれば、そのまま放棄地になる恐れもある。県は「復旧に向け、まずは被害の把握を急ぎたい」(農業基盤課)とする一方、「これだけ大規模な災害なので、復旧がいつになるかは見当もつかない」としている。