能登半島地震による北信越4県の1次産業の被害状況が見え始めた。石川県は犠牲者の多い能登半島地域の農業調査が手つかずだが、新潟、富山、福井の各県では、農地・水路・ため池の亀裂や破損、ライスセンターなど共同利用施設の損壊など深刻な被害が確認された。漁業は、石川県の8割超の漁港で地盤隆起に伴う岸壁の損壊や150隻以上の漁船が沈没するなどしており、今季のズワイカニ漁は絶望視されている。
農業半島の調査進まず
「命を守る活動が優先され、半島地域の農業調査はなかなか進まない」。石川県農林水産部の幹部が18日、打ち明けた。
孤立集落を含む同県内の食料・医療など要支援集落は本震から2週間以上過ぎた現在も半島全域に及び、奥能登の穴水町でこの日、ようやく一部地域の調査が始まったという。幹部は「農業被害も相当に深刻なのは疑いなく、どんな結果になるのか。(復旧が春に間に合うかなど)先のことを考える余裕もない」と言葉少なに語った。
新潟県は普及指導員がJAや共済組合などに聞き取りし、被害の概要をつかんだ。ただ県農林水産部は「液状化が起きた新潟市などは市民や住家の被害把握が終わっておらず、1次産業の被害報告はまだ県に来ていない」とし、被害は膨らむとの見通しを示した。
一方、富山、福井の両県の調査はほぼ終了。富山県農林水産部は「山奥で最後の調査を進めている」とし、「被害箇所は応急処置で春の営農に間に合わせたい」としている。福井県農林水産部は「地中のパイプラインや排水路の調査が終わり次第、被害の全容をまとめる」予定だ。
漁業ズワイガニ漁絶望
県農林水産部によると、県内の69漁港のうち84%に当たる58漁港が能登半島に集中。うちほぼ全てで防波堤が損壊、海底隆起に伴い岸壁も使えなくなるなどしている。昨年11月に始まった県内のズワイガニ漁は今季、資源量の回復が奏功して9年ぶりに漁獲枠が拡大され、首都圏でも観光客誘致のPRを活発化させた直後だった。漁協幹部は「休漁期間が長引けば、漁業から離れる漁師が増える」と不安を隠さない。
新潟県も漁船16隻が転覆したりプロペラが損傷したりする被害を受けた。富山県も8隻が沈没・破損、福井県は「県内44漁港全て無事。漁も再開されている」(農林水産部)という。
林業林道壊れ山腹崩壊
石川県の調査は進んでおらず、珠洲市の3カ所で山腹崩壊が確認されたにとどまる。富山県は氷見市など43カ所で林道の損壊や山腹崩壊を、新潟県は佐渡島など林道6路線で亀裂などを確認した。
(栗田慎一、佐野太一)
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