
カニも、おやじが「大人が食べるものだから」とみそを独り占めして食べていましたけど、それを見ても別に食べたいとは思いませんでした。カニ、エビ、ウニではテンションの上がらない子どもでしたね。
札幌での思い出の味といえば、ジンギスカン。一家に一つジンギスカン鍋があるんですよ。中学校3年生の時に、親の転勤で東京に引っ越したんです。東京には焼き肉屋がたくさんあるじゃないですか。「焼き肉屋ってあるんだ」と不思議な感じがしたことを覚えています。高校生になり、友達同士で食べ放題の焼き肉屋に行ったんです。メニューを見て「カルビって何? ポテトチップスじゃないの?」と(笑)。そのくらい、何も知らなかった。
牛肉もいいんですけど、僕は今でもジンギスカンが大好き。撮影などで札幌に行くと、毎日食べてもいいくらいです。十何年か前に、都内でも中目黒駅付近にジンギスカンの店がたくさんできて激戦区となった時には、僕もいろいろな店に行って食べていました。
ラム独特の香りが好きなんです。中華料理店で中国北東部の料理としてラム肉の串焼きを出すところがありますけど、それも大好きですね。
札幌名物といえばスープカレーを挙げる人もいるでしょうけど、はやり出した頃には、僕はもう東京にいました。スープカレーの洗礼は受けていないんですよ。
そんな僕にとって、カレーといえば「みよしの」。ここはギョーザのチェーン店なんです。小さい頃、札幌には牛丼のチェーン店はなかったと記憶しています。その代わり、札幌の人はよく「みよしの」に行っていました。
ここのギョーザはちょっと癖のある香りがして、それはそれで好きですけど、なぜかカレーも出していて、それがすごくおいしくて。両親と行ったり、塾の帰りに友達と行ったりしました。ごく普通のカレーですけど、妙においしい。僕にとってのソウルフードです。
あまり意識していませんでしたけど、考えてみたら僕はカレーも大好きなんですね。子どもの頃にしょうこう熱で1週間か2週間くらい入院したんですが、母に「僕が退院するまでカレーは作らないでね」と言ったことを思い出しました。また、よくスキーのジャンプの大会を見に行ったんですけど、寒い中でカレー味のカップ麺を食べていましたね。
新型コロナウイルスで自宅で過ごす時間が多かった時から、自分でカレーを作るようになりました。神宮前に「MОKUBAZA」というすごくおいしいキーマカレーの店があって、なんとかその味を自分でも作りたいと思ったんですね。いろいろネットで検索したら、かつてカレーのムック本でレシピが紹介されていたことが分かったので、古本をゲットして挑戦してみました。
うまく再現できたので、料理が好きになって。自分で作り出すと、食材への興味も湧いてきます。
奥さんの実家は、畑をやっていてけっこう大掛かりにいろんな野菜を作っているんですよ。実家から頂く野菜とお米がおいしくて。モロヘイヤをもらうこともあります。ネバネバの感じが好きで、うれしいです。パクチーをもらうこともあり、そうするとカオマンガイ(タイのチキンライス)を作りますよ。
自分では手入れがうまくできないだろうと思ってまだ挑戦はしていませんが、いつか僕も家庭菜園をやってみたいと思っています。
さいとう・よういちろう 1970年、北海道生まれ。94年、篠原哲雄監督作品「YОUNG & FINE」のオーディションで主役に抜てきされ、役者の道へ。青山真治監督作品「教科書にないッ!」に出演して以後、青山作品のほとんどに出演。同監督の「軒下のならず者みたいに」では主役を務めた。主演映画「蒲団」(山嵜晋平監督・田山花袋原案)が公開中。その後も出演映画3作品が今年公開予定。