

「父ちゃん、すげぇな」と快挙に感動し、自らのXに投稿したというたくみさん。父、和徳さん(64)は茨城県鉾田市でメロン90アールを栽培。メロン生産量日本一の茨城県が開いた品評会のうち、今年新設された赤肉部門で、最高賞に輝いた。
たくみさん自身、国民的漫才コンテスト「M-1グランプリ」決勝に2年連続で出場したが王座には届かなかった。それだけに「チャンピオン、しかも初代ですからね」と脱帽する。相方の竹内まなぶさん(35)と一緒に、メロンの形の手作りトロフィーも用意した。
「父の日」を前にたくみさんに改めて父へのメッセージをもらった。それを伝えるため、記者は鉾田市の和徳さんを訪ねた。

子どもの頃から、メロン栽培に全力を注ぐ父の姿を目の当たりにしてきた。家族そろっての外食の日。雨が降り出すと、和徳さんは行き先を急きょ変更。メロンを栽培するハウスに雨が入らないよう、開口部を閉じる作業に向かってしまった。
当時は「何でだよ」と憤ったたくみさん。ただ、今振り返ると「プロとしての行動だったんでしょうね」と感じる。
たくみさんからのメッセ-ジを伝えると和徳さんは少し照れくさそうな表情を浮かべながら「今までの道のりを見ていてくれたのかな」と話し始めた。就農して40年。メロンの糖度や網目の美しさにこだわり、ハウス内の温度管理に、とりわけ心血を注いできた。
たくみさんが保育園児だった頃のおゆうぎ会当日。天候が急変し、舞台は観ずにハウスに駆け付けた。「たくみには悪いことをした。でも、良いものを作らないと家族を養えないから」。メロン栽培のプロ、そして家族を守る父としての矜持を貫く姿勢は、当時から変わっていない。

ただ、和徳さんのメロンの味はファンをもうならせ、翌年も購入する人も出てきた。「味が良いからリピーターが付くんよ。それはお父さんの努力だからね」という妻のかおりさん(65)の一言で、「もやもやした気持ちも消えた」。
和徳さんのメロン農家としての技術の高さは、自身が栽培した「クインシー」が「いばらきメロン品評会KING&QUEENコンテスト2024」の赤肉部門の最高賞、ゴールドマイスター賞を獲得する形で証明された。
たくみさんは、和徳さんの功績を伝えるXの投稿にあえて、お笑いコンテストでよく使われる「賞レース」という言葉を使った。「お笑いファンの人も注目してくれるかなと思って」と打ち明ける。
自身が果たせなかった「賞レース」での栄冠を実現させた和徳さんを尊敬しつつ、自分も負けてられないという気持ちも込めた。

「メロンは出荷直前まで気が抜けないし、芸人も、どこにチャンスがあるか分からないんじゃないかな」とエールを送る。
記者は取材を終え、たくみさんに和徳さんのメッセージを伝えた。「お互い、プロフェッショナルとして頑張りましょう!」との言葉が返ってきた。お笑い芸人とメロン農家--。進む道は違っても、互いを尊敬する父子。プロに徹する姿勢は受け継がれている。