新里菊也社長ら酪農家7戸が出資し、外国人技能実習生含む15人が働く。ふん尿処理と堆肥販売を目的に設立した具志頭村(ぐしかみそん)酪農有機肥料生産組合が前身で、2017年に株式会社化。町バイオガスプラントの指定管理者となった。一般・産業廃棄物の受け入れや発電事業で収益を上げ、副産物のバイオ液肥の地域利用を進めている。
普及には国のみどり戦略交付金を活用した。散布面積は17年度の138ヘクタールに対し、23年度は205ヘクタールと計画以上に拡大。年間約500件の農家が利用し、24年度は220ヘクタールの散布を目指している。
液肥は「食味や生育が良くなる」と口コミで広がり、多品目で使われる。1・7ヘクタールでサトウキビを作る野原進さん(75)はバイオ液肥を使って5年。刈り入れ後に芽が出たら液肥を入れ、夏は水替わりに入れる。「液肥をかけた株は草勢があり、収量が違う」と効果を実感。化成肥料は通常の3分の1で済むという。
沖縄県環境科学センターと連携し、バイオ液肥の肥料成分、生育調査などを伝えるパンフレットを作成。データや写真で化成肥料の代替効果を伝え、活用を呼びかける。
事業の拡大を受け、今年、新たな発酵槽を自前で建設した。さらに、今月末からバイオ液肥を使い自給飼料となるデントコーンの栽培に乗り出す。県の耕畜連携事業を使い、コントラクター(農作業受託組織)事業も視野に入れ、協同の輪を広げる。
新里社長は「地域循環型に徹するのが大事。良いものを作れば皆が使ってくれる。個々でできないことを一緒に動いて結果を出し、ずっと続けていくのが目標だ」と話す。
酪農家の負担軽減も
バイオガスプラント事業は酪農家側のメリットも大きい。ふん尿処理は「営農を続けられるかどうかに関わる」(新里社長)ほどの大問題で、個々では手間も経費もかかる。同社がふん尿を回収する牛は約600頭。1日30トン、日曜日以外は毎日牛舎を回る。搾乳牛70頭を飼う諸見里真吉さん(65)は「液状のふん尿を自ら処理するのは大変だった。今はその分休めるのがいい」と協同事業の良さを話す。同社の収益は酪農家側の機材や設備の更新に充てている。
(柴田真希都)
バイオ液肥利用のポイント
■バイオ液肥は耕種農家の畑へ無料で散布
■化成肥料を低減可能で生育・食味も良好
■酪農家のふん尿処理の手間・経費を削減