第11話「赦しの光」で、主人公「サクナヒメ」や仲間たちに襲いかかってきた山賊「石丸」。憎しみにとらわれる石丸ですが、過去に一瞬だけ笑顔を見せたことがありました。そのきっかけは、お米でした。
今はサクナヒメの仲間で、米作りを手伝う「田右衛門」はかつて山賊で石丸の仲間でした。凶悪な山賊の石丸が「一度だけ笑ったことがありまする」と田右衛門が打ち明けます。その出来事に、かいまるが関わっていました。
かいまるは、田右衛門や石丸がかつて加わっていた山賊の頭の息子でした。ある時、かいまるが石丸に歩み寄り「あげゆ」と手にしたおにぎりを渡します。

普段は一切笑わない石丸でしたが、おにぎりを手にしたかいまるに「フッ。いらねえよ」と言いながらも、しっかり受け取り、ほほえみながら、かいまるにも分け与えます。そんな過去を話した田右衛門は「どのようにすさんでも、その心は石丸のどこかに眠っている」と願います。

お米は心に良い影響を与えるのかーー。管理栄養士で、一般社団法人日本健康食育協会の代表理事を務める柏原ゆきよさんは「お米を食べると情緒が安定し、ハードな状況でも踏ん張りがきくようになります」と話します。
柏原さんによると、お米に含まれるアミノ酸の一種「トリプトファン」は体内で、精神的安定を促す神経伝達物質「セロトニン」に変換されます。糖質のエネルギーやビタミンB6がセロトニンへの変換を助けます。ビタミンB6は大豆や卵、魚などタンパク質が豊富な食品に含まれるので、柏原さんは「お米だけでなく、他の食品との組み合わせが大事」と説きます。ご飯に、みそ汁や卵焼き、焼き魚などを合わせることは栄養だけでなく、心の安定にもつながるというわけです。
「特に朝食をしっかり取ることが大事」と柏原さんは話します。朝日を浴びたり、体を一定のリズムで動かしたりすると、セロトニンへの変換が促されるので、朝食にお米を咀嚼しながら食べるとセロトニンの分泌が進んでいきます。
朝食後に分泌されたセロトニンは夜ごろになると、睡眠の質を良くするメラトニンに変わるとして、柏原さんは「朝日を浴びて、ご飯をしっかり食べることが精神的な安定につながっていく」と話します。
憎しみの心を持ち続けてきた石丸も、お米のおかげで束の間ながら心が落ち着いたーー。そう考えることもできそうです。

続いて第12話「星タマ剣」。石丸との戦いを終え、火山灰に覆われた田んぼはよみがえらせたサクナヒメたちは、米作りを再開していました。そんな中、水を張った田んぼに、なんと農具を付けた牛が現れます。牛の背中には、かいまるが乗っていました。
サクナヒメは「う…牛?!」と目を丸くして驚きます。「おぬしが連れてきたと申すのか?」と尋ねられた、かいまるは「あーい」と答えます。かいまるは以前、カモも連れてきていたので、動物を手なづける力があるようです。

牛は、木材で組み立てた農具を背負っていて、後部には鉄製の爪が付いています。農具はサクナヒメの親友で発明を司る神「ココロワヒメ」が作ったもので、牛が歩き出すと、後部の爪が田んぼの土をかいていきます。田右衛門は「これだけにあらず、牛がおれば、力仕事に大いに役立ちましょう」と期待します。

稲作には、水を張った田んぼの土をかいて、平らにする「代かき」という工程があります。現代の代かきはトラクターでやるのが主流ですが、トラクターがない時代は、劇中のサクナヒメたちと同じように牛の力を使ってやっていました。
現代は、牛の代わりにトラクターが力を発揮します。爪が付いた専用の機具を取り付けて田んぼの中を走り、爪で土をかいて田面を平らにしていきます。ココロワヒメが作った農具も基本的な仕組みは同じです。
代かきは稲作の重要な作業工程の一つで、農水省が公表している「水稲の基本的な栽培技術」でも「土壌を柔らかくにして移植作業を容易にする」と代かきの効果を説明しています。
代かきは、やる時期が重要です。農水省の「水稲栽培の基本的な技術」は田植えの「2~3日前」を推奨していて、移植までの間が長すぎると「雑草の発生が多くなる」と注意を促しています。
劇中でも、かいまるが連れてきた牛による代かきの後、田植えが始まります。サクナヒメは自身の育て役「タマ爺」に、「共に田植えをするのじゃ」と誘います。苗を手渡し、タマ爺に植え方を教えます。

サクナヒメは、仲間と米を作る「ヒノエ島」を守るため、島を脅かす悪神「オオミヅチ」との戦うことを決意します。しかし、戦いに必要な力を得るには、タマ爺と別れなければならないことが分かります。
幼少の頃から一緒にいて、神々の都を追われて島にやって来てからも、ずっと自分を支えてくれたタマ爺との別れに、サクナヒメは動揺します。ですが、タマ爺は「島の皆を守りたいのでございましょう?」と改めて問いかけます。タマ爺の後押しを受けて、サクナヒメは力を得ることを決めます。
戦いの準備や米作りが進む中、タマ爺は、自身に田植えのやり方を教えるまでになったサクナヒメの成長を喜びます。かつて自身が仕えたサクナヒメの父、武神「タケリビ」と母の豊穣神「トヨハナ」を思い、「サクナ様は立派な豊穣神になられました」と静かに心の中で伝えるのでした。

次回第13話は最終回「天穂のサクナヒメ」。オオミヅチとの戦い、そして島での米作りの行方はどうなるのでしょうか。
テレビ放送の時間帯と放送局は次の通り。
▽毎週土曜日午後11時から=テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送
▽毎週火曜日午後9時半から=AT-X
▽毎週金曜日午前1時29分から=熊本県民テレビ
▽毎週月曜日午前2時(毎週2話ずつ、最終回のみ1話)=富山テレビ放送
各種動画配信サービスでも配信されている。
(C)えーでるわいす/「天穂のサクナヒメ」製作委員会