石破氏の総裁任期は2027年9月までの3年間。10月1日召集の臨時国会で岸田文雄首相の後継となる首相に指名され、新内閣を発足させる。
総裁選出後の会見で石破氏は、衆院解散の時期について首相指名後に検討すると述べるにとどめた。党役員や閣僚の人事は「まだ白紙」だとしつつ、旧派閥のバランスには配慮しないとした。能登半島地震や豪雨の復旧には早急に執行するため予備費を充てる考えを表明。物価高対策にも意欲を示した。
石破氏は選挙戦で、米の増産にかじを切り、輸出を拡大すべきだと訴えた。生産拡大に伴う米価下落には「直接所得補償」で対応するとし、水田転作などに充てている約3500億円を財源とする考えを表明した。農相時代に「相当詳細なシミュレーション」を実施していると主張した。
農政では今後、改正食料・農業・農村基本法を踏まえた農業予算の増額や基本計画の改定、米政策の見直しなどが課題となる。農相人事や衆院選公約を通じてどう方針を打ち出すかが焦点となる。

今回の総裁選は過去最多の9人が立候補。1回目の投票では国会議員票と党員・党友票の合計で高市早苗経済安全保障相181票、石破氏154票、小泉進次郎元環境相136票の順で、どの候補も過半数に達しなかった。上位2人による決選投票で215票を得た石破氏が194票の高市氏を逆転した。
自民党の新総裁に、農相や地方創生担当相などを歴任した石破茂元幹事長が就いた。農政に明るく、与野党から期待の声が上がる。農政は予算の増額など課題が山積する。石破氏の農政手腕が早速、問われることになる。
予算を巡って石破氏は、日本農業新聞のアンケートで「増額」の意向を示した。有言実行が求められる。
米の増産に意欲を示したのも特徴だ。国費を投じての生産抑制は持続可能ではないとの見方は政府・与党内にもあり、今後の動向が注目される。ただ、需要を上回る増産には米価下落のリスクがある。石破氏は所得補償を唱えたが、政府・与党には慎重論がある。
早期の衆院解散・総選挙が想定される。野党第1党の立憲民主党は経験豊富な野田佳彦元首相が代表に就き、戸別所得補償制度復活や農業予算倍増を唱える。与野党が農政でどんな論戦を展開し、どんな公約を打ち出すかが今後の焦点となる。
(松本大輔)