オオミヅチは、サクナヒメと仲間たちが米を作りながら暮らす「ヒノエ島」を危機に陥れていました。サクナヒメはオオミヅチを倒すことを決意します。戦いの場に行く前に、仲間の一人で料理が得意な「ミルテ」から、竹皮の包みをお弁当として手渡されます。
戦いが始まると、オオミヅチはサクナヒメに幻覚を見せて正気を奪います。サクナヒメは命を奪われそうになりますが、その瞬間、懐にあった竹皮の包みが出てきて、中には真っ白なおにぎりが入っていました。それを見たサクナヒメは「皆で作った米…」と正気を取り戻し、危機を脱します。
おにぎりをほお張ったサクナヒメは、オオミヅチに「米には7人の神が宿る。一粒に7人じゃ」と話します。米に宿る7人の神にまつわる言い伝えは現実にもあって水、土、風、虫、太陽、雲、作り手を挙げることがあります。サクナヒメが共に暮らし、一緒に米を作ってきた仲間も7人います。おにぎりを用意したミルテだけでなく、育て役の「タマ爺」、野良仕事が好きな「田右衛門」、鍛冶仕事が得意な「きんた」、織物や手芸ができる「ゆい」、小さな男の子で動物を手なづけることができる不思議な力を持った「かいまる」。さらに親友で発明を司る神として農具作りに協力する「ココロワヒメ」を含めると7人になります。
サクナヒメはおにぎりを食べ続け「この体に、これで何人の神が宿るかのう。百か千か」と話します。力強さを宿した目でオオミヅチを見据え、「大いなる水の神よ。弑し奉る」と宣言し、最後の戦いに挑みます。
米は炭水化物を豊富に含み、体のエネルギー源となります。農水省がホームページ上で公表している「お米と健康・食生活」でも、米に含まれる炭水化物について、「体内で消化されるとブドウ糖となり、ブドウ糖を唯一のエネルギー源とする脳や神経系の活動も支えている」と解説しています。
その上で、米に含まれる炭水化物は「健康に暮らし、仕事や勉強に集中できる充実した日々を送るためのエネルギーを得るという点でも、大切な栄養素」としています。
サクナヒメがおにぎりで力を得たように、お米はエネルギーを与えてくれる食べ物ですが、お米そのものを育てるには、稲に栄養をしっかり与える必要があります。今夏のような高温続きの中では、稲も栄養が不足しがちです。その時、重要になってくる工程の一つが「穂肥(追肥)」です。
「人にウナギを、イネに穂肥を~夏を乗り切るために~」。そんなユニークなキャッチフレーズで、稲作農家に、田植え前に肥料を入れる「基肥」とは別に、田植え後の「穂肥」を施すよう呼びかけているのは、鳥取県東部農林事務所の鳥取農業改良普及所です。
「水稲も夜の気温が高いと呼吸量が増えて体力を消耗し、本来もみに蓄えるべき養分を消費してしまう。それは収量や品質の低下の要因となる」と同普及所は説明します。そのため穂肥を「稲のスタミナ源」と位置付け、田植え後に穂肥を2回与えるよう促しています。
1回目でもみの数を確保し、2回目でもみの成熟を促します。穂肥を与える時期は、稲の生育状況などを見極めて決める必要があります。農家は、地元のJAや行政の指導を参考にしながら、穂肥の最適な時期を見極めます。
一方、穂肥の回数が増える分、農家の肥料代も増えていきます。原材料費の高騰を背景に、肥料代は上がっています。農水省が毎月公表している生産資材などの価格動向「農業物価指数」によると、2020年を100とした指数で、肥料は8月時点で139・4。3カ月連続で上昇しています。
稲作農家は米の収穫量や品質を守るため、コストの増大を受け入れながらも穂肥を与えるなどして、高温下での稲作に奔走しています。
実はサクナヒメたちも、稲に穂肥を与えています。より良い米を目指し、サクナヒメの母「トヨハナ」が稲作の工程を記した「農書」を頼りに、2年目以降の稲作で取り入れました。穂肥以外にも、中干しや稲架がけなど、仲間と一緒に地道な作業を繰り返して作り上げた米は、オオミヅチと戦うサクナヒメに、大きな力を与えました。
戦いを終えたサクナヒメは、仲間の下に戻ります。季節は収穫の時。黄金色の稲穂が広がる田の中で、仲間が出迎えます。
♪まばゆい米と酒
♪ありがとう田の神さんよ
♪神も人も栄えよ永遠に
サクナヒメたちの世界に伝わる豊作を願う「ヤナト田植唄・祭」が流れる中、物語は幕を下ろします。
最終回を含むこれまでの放送回は、各種動画配信サービスで配信中。
(C)えーでるわいす/「天穂のサクナヒメ」製作委員会