衆院は9日の本会議で解散され、与野党は事実上の選挙戦に入った。衆院選は「15日公示、27日投開票」の短期決戦。物価高を踏まえた経済対策や「政治とカネ」の問題の他、農政では石破茂首相が見直しを提起した水田政策などが争点となる。生産コストの高止まりを受け、農家の所得確保に向けた施策も問われる。
衆院選は2021年10月31日以来。小選挙区289、比例代表176の計465議席を争う。小選挙区定数の「10増10減」などを受けた新区割りで初めて実施する。内閣発足から8日後の解散、26日後の投開票はいずれも戦後最短となる。
自民の森山裕幹事長は勝敗ラインについて連立を組む公明党と合わせて過半数との認識を示した。立憲民主党は自民の裏金議員への野党候補一本化を目指すが、日本維新の会、共産、国民民主各党などは慎重姿勢を示す。
解散に先立ち自民は選挙対策本部会議で、裏金事件に関係した前議員ら12人を非公認にすると決めた。立民の野田佳彦代表は同日の党首討論で「大半が公認で、裏金隠し解散だ」と批判。政権交代こそ最大の政治改革だと訴えた。
農政では水田政策などが争点となる。石破首相は先の自民党総裁選で、米の増産と農家への直接所得補償を提起。首相就任後は、所得補償は「創意工夫や日々の努力にブレーキをかけ、農地の集積・集約化が進まなくなるなどの指摘もある」と慎重姿勢に転じた。生産費を考慮した価格形成を目指すと説明するなど従来の政府方針に沿った考えを示す。
これに対し立憲民主党など複数の野党は、農家の所得を補償する新たな直接支払制度の創設を主張する。生産費の価格転嫁だけでは不十分との認識が背景にある。同党農林幹部は、自民党政権で離農が進み、農地が減ったと批判。農政の在り方も争点とする構えだ。
石破首相と全閣僚は9日午前の臨時閣議で衆院解散の閣議決定書に署名。衆院本会議で額賀福志郎議長が解散詔書を読み上げた。