米大統領にトランプ氏 影響は? 追加の輸入解禁懸念も 「一律関税」明言 輸出に逆風
米国農務省(USDA)の予測によると、2025年度(24年10月~25年9月)の農産物貿易は、赤字額が425億ドルに上る。米農業団体「ファームビューロー」のアンケートで、トランプ氏は赤字に対し「明らかに海外での不公正な取引慣行の結果」だと指摘。「できる限りの手段を使ってこれらの障壁と戦う」としている。
元農水省職員で環太平洋連携協定(TPP)交渉などを担った、明治大学農学部の作山巧専任教授は、自動車の関税引き上げを交渉のカードとし、農産物でのさらなる譲歩を求めてくる懸念を指摘する。ただ、日本は米国からの輸入で、既に主要品目での関税削減を受け入れている。そのため、交渉では新たな品目の輸入解禁などが要求される可能性があるとみる。
日本政府関係者からは「輸出が伸びている中で打撃にならないか」と農産物輸出への影響を懸念する声も上がる。米国向け農林水産物・食品の輸出は、2023年で2062億円で国・地域別で3位となっている。
トランプ氏は第1次政権時、米国が主導していたTPPから離脱。その後、自動車への追加関税の発動をちらつかせて日米貿易協定をまとめた。日本は牛肉などでTPPと同水準の関税引き下げをのまされた。来年1月に発足する第2次政権も市場開放圧力を強めてくる可能性がある。
トランプ氏は「ドル安志向」とみられ、生産資材高騰を招く円安が収まり、円高が進むとの見方もある。農林中金総合研究所の南武志理事研究員は、トランプ氏が掲げる関税引き上げで、「インフレの懸念が強まり、連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースが想定よりも遅くなることが考えられる」と指摘。日米の金利差は思っていたほど縮まらず、円安ドル高傾向が続く可能性を見通した。