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台湾では19年に施行された有機農業促進法に基づき、有機農業や環境に配慮する農業者に、1ヘクタール当たり年3万~8万台湾ドル(現在のレートで約14万~38万円)を助成している。政府による有機認証の審査費助成や有機農業の推進地区の設置、専門家らによる栽培支援なども展開する。24年10月時点で、有機農業全体の75%に当たる1万9942ヘクタールで認証は取得されているが、そのうち、最多を占めるのが野菜だ。9395ヘクタールに上り、20年末比で2・8倍と急拡大している。背景には政府がここ数年、販路の多角化に注力してきたことがある。学校給食では3000校以上に導入した他、軍隊向けの供給や、企業の社員食堂での利用推奨なども行い、「販路が広がり、需要が高まった」(農業部)。
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台湾北部で有機野菜と養鶏を手がける亜植有機農場は、チンゲン菜やシュンギク、ヨモギなど約30品目を栽培する。ハウスは105棟(約2ヘクタール)あり、露地栽培も含め、1日当たり約1・3トンをスーパーや学給向けに供給している。台湾は「亜熱帯の気候のため病害虫や雑草の影響を受けやすい」(同)。同農場では対策として、ハウス出入り口に網を張り侵入を防ぐ他、粘着シートやフェロモントラップを使用。種まき前の耕起で生育初期の雑草を枯らせる他、防草シートも活用する。
台湾政府は促進法に基づき、有機農産物の生産コストなどに関する消費者理解の醸成にも取り組む。葉物1袋当たりの販売価格は、有機でないものは一般的に25台湾ドル(約120円)程度なのに対し、同農園は40台湾ドル(約191円)に設定。黄彦哲代表は「価格はここ10年据え置いているが、固定客が購入を支えている」と話す。