鹿児島県の薩摩半島中心部に位置する南さつま市金峰町。7月中旬ごろから収穫する超早場米が「金峰コシヒカリ」として知られる同町では、3月下旬に田植えがピークを迎えた。早期水稲約6ヘクタールを手がけ、JAさつま日置に出荷する鶴薗良章さん(74)は「おいしい新米を消費者に届けたい」と力を込める。
地域は圃場(ほじょう)整備が進み、従来から主食用米の作付けが多く、増産は難しい。鶴薗さんは畦畔(けいはん)の除草を徹底し、いもち病などの侵入を防ぐことで収穫量の増加を図る考えだ。
同じく田植えが進む早場米産地・宮崎県のJAみやざき西都地区本部では、25年産の主食用米の作付け増加を見込む。「安い加工用米からの転換が増えそうだ」(営農指導課)。大規模な畜産農家と契約して栽培する発酵粗飼料(WCS)用稲などからの転換は少ないとみる。各産地では、既に集荷業者が農家らを訪れる動きもあるという。
一方、思うように主食用米の生産を増やせない産地もある。九州の早場米地帯のあるJAは「高齢化による離農などで主食用米の作付けも減る見込みだ」と明かす。飼料用米から主食用米への転換を検討する農家もいるが、地域全体では米の作付面積そのものが減少すると見通す。
このJAでは生産量の確保に向け、多収品種の試験を進め、25年産からは高温耐性と収量性に優れる「にじのきらめき」を試す予定だ。「早場米の引き合いはあるが応え切れていない。1俵でも2俵でも多く取れるようにしたい」と語る。
農水省がまとめた25年産米の作付け意向調査(1月末時点)によると、主食用米の作付面積は、宮崎1万2400ヘクタール、鹿児島1万5600ヘクタールでいずれも前年並みだった。
(小林千哲)