昨年来の米不足を受けた給食用米価を巡る全国調査は初めて。 調査票は1月下旬、各学給会に送付。供給市区町村数や供給方法、等級、仕入れ先、24年度当初価格と新米改訂価格、25年度当初価格、影響などを尋ねた。3月末までに9割超の43学給会が回答した。
本紙集計によると、9割が例年と同じ精米か炊飯での供給だが、米不足などから3割が3等米も含めていた。仕入れ先は、9割以上がJA全農などJAグループで、米卸や個人農家も。1キロ単価は24年度当初283~399円から新米時に292~591円と急上昇。25年度当初は過去最高額となる400~707円となった。
多くの学給会が仕入れ先との交渉で価格を抑えた他、「地場産米を県産米に変更」「精米回数を減らすなどの経費削減」を図った。それでも効果は限定的で、「米飯回数を減らす自治体がある」「副食やデザートの質低下が進んでいる」など影響が広がる。
学給会から米の供給を受ける自治体は、95年の食糧管理法廃止を機に減少し、現在は全国1740自治体の7割弱。自力調達の3割も同価格帯の米を購入するとみられる。
複数の学給会が供給していなかった自治体から供給の要請を受けたが、確保できたのは一部だけだった。
(栗田慎一、糸井里未、佐野太一)
〈ことば〉米飯給食
05年制定の食育基本法で地場産活用を目的に推進された。文科省の最新調査によると、米飯給食実施率は100%で、うち週3回以上が98・3%。毎日米飯は4・3%。
学校給食用米価を巡る日本農業新聞の全国調査は、影響の深刻さを初めて定量的に示した。問題の本質は、「米価」ではなく、「給食のコスト」をどう考えるかにある。
文科省によると給食1食の平均は250円前後。これで主食の値段が上がれば、米飯回数や給食実施回数を減らしたり、副食やデザートの質と量を落としたりするしかない。
自治体が食材費に当たる給食費の値上げをためらうのは、法律が保護者負担を原則とするため。高騰分を補う交付金は、年度ごとの暫定的な仕組みだ。安さだけが優先されれば、給食の地場産化は後退し、環境保全型農業も給食という「出口」を失いかねない。
昨年来の米の値上がりは異例だが、それまでの米価は低迷し、「持続可能な農業」を妨げていた。26年度から始まる学給無償化は、食材の価格変動にも対応する柔軟な法制度が求められる。給食用米の値上がりを、「子どもの大切な1食」から食料安全保障を考えるきっかけにしたい。