農家や農業関係者に、気候変動への対応を尋ねると「遮光・日焼け対策」「高温耐性品種の導入」「作期見直し」などが挙がった。品質不良や害虫被害の多発を訴える声も多く、現場では農業生産の維持に苦慮している。
「冬季の気温上昇で病害虫の発生が多くなってきた」と話すのは、千葉県の60代男性水稲農家。高温耐性品種の導入などを対応に挙げた。
ただ、品種の見直しはハードルが高いケースも多い。栃木県の30代男性兼業農家は、永年作物の果樹の場合、「高温耐性のある品種への転換も容易ではない」と指摘する。
北海道の60代男性農業法人従業員は「温暖化の影響で、品目間で収穫期が重なるようになり、収穫物を運搬する車両や運転手の確保が難しくなった」と説明。そうした状況下では「効果的な品種を選択できない」と打ち明ける。
鳥取県の50代女性JA職員は「気候変動や国際情勢の中で農産物の生産コストと消費価格のバランスが崩れている」と指摘。「生産者が経営を続けられるよう、国レベルでの支援や対策が急務」と訴える。

日本の食を守るため、日常生活の中で何かしら「行動している」は317人に上り、全体の88%を占めた。
行動内容を複数回答で尋ねると、最多は「地元産、国産を積極的に買う」の269人。栃木県の20代女性公務員は「なるべく地元の野菜を買い、農家の力になればと思っている」とエールを送る。
一方、「農畜産物の『再生産価格』を受け入れる」を挙げたのは98人。2位の「自分で野菜などを育てている」、3位の「家族や友人に国産、地元産を薦める」に続いて4位だった。
福島県の60代女性兼業農家は「米、野菜の価格をもっと上げていいと思う一方、さまざまな物が高騰している中、命をつなぐ食料をあまり高くできないのかとも思う」と話す。生産者の立場から、気候変動やコスト増大に直面する農業現場の実態と、物価高騰に苦しむ国民生活の両方を考慮する声が上がっていた。
消費者側から農業政策の拡充を求める声が出ており、山口県の50代女性会社員は「生産者や消費者の努力も大切だが、限界がある。国が責任を持って農業を守らなければならない」と訴える。
(石原邦子、柘植昌行)
■調査概要
食と農に関する意識・行動変容につながるプロジェクトや調査を手がける(株)アイクリエイトと4月10日までの7日間、LINEや交流サイト(SNS)などで回答を募った。無作為抽出の世論調査とは異なり、多様な意見を聞くために調査した。47都道府県の361人が回答。自身の属性を農家・農業関係者などの「生産者側」とした人は224人(62%)、消費者側は137人(38%)だった。
この記事は、気候変動に関する世界的な報道連携「Covering Climate Now」による「89%プロジェクト」に参加しています。