[農政の憲法検証へ](2)総論(下)目標達せず実効課題
一方、近年の農政では規制改革推進会議など政府の会議体が主導する場面も目立った。農政方針として、官邸主導の色が濃い「農林水産業・地域の活力創造プラン」も定着。基本計画や、それを審議する農水省の食料・農業・農村政策審議会の存在感が薄れているとの声もある。
「食料の安定供給」という基本法の理念の実現へ、基本計画の根幹に据えられたのが食料自給率目標だ。基本法では自給率について「向上を図ることを旨」とした。だが、法制定当時40%だったカロリーベース自給率は低下傾向が続き、21年度は38%。目標の45%とは開きがある。
自給率低下の底流には生産基盤の弱体化や貿易自由化の進展があるとみられる。基本法制定後、農家は激減、農地面積も減少の一途をたどる。環太平洋連携協定(TPP)など大型の経済連携協定が相次いで発効し、農産物の市場開放も進んだ。こうした状況変化が自給率に与えた影響について、丁寧な検証が求められる。
一方、15年の基本計画見直しで新たな指標として盛り込まれた、不測時に供給可能なカロリーを示す「食料自給力」は、肥料など生産資材が十分確保されていることを前提としている。同省はこうした考え方に「不備がある」としており、今後の論点となりそうだ。