[農政の憲法検証へ](4)農業 価格転嫁の構造課題
一方、高齢化や人口減少の進展で、「担い手」だけでは農業を維持できないとの懸念は高まっている。「担い手」を重視しつつも、特に中山間地域など条件不利地では「半農半X」を含む多様な人材を農業・地域の支え手に積極的に位置付けるべきだとの声が、政府・与党から上がる。
農産物の価格形成の在り方も論点となりそうだ。基本法は、消費者の需要に即した生産のため、農産物価格が需給事情と品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講じるとした。
だが、足元の資材高騰では、コスト上昇分を農産物価格に転嫁できないとの懸念が生産現場で高まる。同省にも「価格転嫁が進む仕組みを考える必要がある」との声がある。
同法は、市場評価に委ねた価格決定で農業経営が不安定にならないよう、経営安定対策を講じるとも定める。だが、これに対しても「コストの概念が薄い」(自民党食料安全保障検討委員会の森山裕委員長)などと課題を指摘する向きがある。
農政で急速に存在感を増しているのが、同省の「みどりの食料システム戦略」だ。農業の環境負荷軽減へ、化学農薬の半減や化学肥料の3割減の他、有機農業を全耕地の25%に拡大するといった大胆な目標を掲げる。
同法も農業の「自然循環機能の維持増進」へ、農薬や肥料の適正使用や家畜排せつ物などの有効利用へ施策を講じると掲げるが、位置付けが十分か議論になる可能性がある。