[農政の憲法検証へ](3)食料 危うさ増す輸入依存
「国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行わなければならない」。同法は食料の安定供給に向け、こう定める。「世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有している」ことを踏まえた。
だが、農林水産物輸入額は、法制定時の1999年は7兆591億円だったのに対し、2021年は10兆1656億円と増えた。
輸入依存のリスクは法制定時以上に高まっている。近年は新興国との調達競争や海上輸送の混乱、円安などで輸入食料の値上がりや調達の不安定化が目立つ。政府からは、同法が食料を安定的に輸入できる「豊かな時代」(政府関係者)に制定されたものだとして、見直しの必要性を指摘する声も上がる。
食料供給と農業生産の前提となる生産資材を巡る記述が「非常に希薄」(自民党食料安全保障検討委員会の森山裕委員長)との声も強い。現行法は、足元で直面する肥料原料や飼料穀物、燃油などの高騰、調達不安を十分想定できていないとの指摘だ。今回の検証で大きな論点となる。
法制定時より進展した農産物輸出についても、食料の安定供給や生産基盤の維持で果たす役割などを、再考すべきだとする声も政府内にはある。同法は輸出を巡り「農産物の競争力を強化するとともに、市場調査の充実、情報の提供、普及宣伝の強化その他必要な施策を講ずる」としている。