[農政の憲法検証へ](5)農村 営農、生活の基盤維持
同法は「多面的機能の発揮」も基本理念とする。国土や自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承など農産物の供給以外のさまざまな機能だと定義し、「将来にわたって、適切かつ十分に発揮されなければならない」とした。政府は、世界貿易機関(WTO)交渉などで農産物の国境措置を守るための論拠としてきた。
同法は、中山間地域などの生産条件の不利を補正し、多面的機能の確保を図る施策を講じるとも規定。これを根拠に具体化されたのが、2000年開始の中山間地域等直接支払制度だ。同制度を含む日本型直接支払制度は現在も続き、17年からは各事業で優先枠を設けるなどする「中山間地農業ルネッサンス事業」も措置された。一方、中山間地域等直接支払制度は、高齢化で営農継続を断念する動きが広がり、20年度の取り組み面積が大きく減るなど、課題も表面化している。
農村振興の具体策として、同法は都市と農村との交流を支える考えも提起。農業・農村への理解を深める狙いだ。消費地に近い都市農業の振興も掲げた。
一方、与党内には、現行法は農業の6次産業化や農村への人の呼び込みといった視点が弱いとの意見がある。防災・減災などの観点で、基盤整備に必要な施策を規定するよう求める声も上がる。(おわり)(松本大輔が担当しました)