[論説]「デジ活」中山間地域 横のつながりを築こう
「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指し、岸田文雄政権が打ち出した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」は、①地方に仕事をつくる②人の流れをつくる③結婚・出産・子育ての希望をかなえる④魅力的な地域をつくる――を柱としている。「『デジ活』中山間地域」には、そのモデルとなることが期待されている。
農水省が2日に発表した第1弾の登録状況では、15道府県22地域が導入に向けて手を挙げていることが分かった。中には、三重県多気町のように、スマート農業で先進的な取り組みを進める地域だけでなく、「デジタル技術の活用は正直、これから」(西日本の自治体担当者)という地域も少なくない。農水省が中心となり内閣府や総務省、国土交通省など、関係8府省連携による支援が強化されることになっており、今後の展開が注目されている。
中山間地域を多く抱える島根県からは、最多となる5地域が名乗りを上げた。奥出雲町は水田の水管理技術の地域内継承、出雲市は農地区分の明確化、大田市は買い物支援、邑南町は人材バンク管理の効率化、浜田市は有害鳥獣対策など多彩なデジタル技術の活用が見込まれている。
新しいことへの挑戦には失敗も付きものだ。登録地域はデジタル特有の情報伝達力を生かし、成功体験はもちろん、失敗事例も含めて共有してほしい。
コンビニ大手のセブン-イレブン・ジャパンの強さは、店舗間の「つながり」にあるという。大阪の風習に過ぎなかった節分の恵方巻きが、瞬く間に全国に広まったのも、同チェーンの力が大きい。その情報伝達力は、全国に2万1000店舗以上を構える今も健在だ。取引のあるJAグループ幹部は「良い情報も悪い情報も瞬時に伝わる。だから全体として同じ失敗は繰り返さない。農業界も見習うべきではないか」と指摘する。
新型コロナ禍を経て、中山間地域には若い世代を中心とした地方移住や、働きながら休暇を取る「ワーケーション」への関心の高まりなど、これまでにない追い風が吹いている。一方で、少子化に伴う人口減少や高齢化の進展など、依然として向かい風も強い。
デジタルの力で、まずは地域間の横のつながりを強化するところから始めよう。