[論説]直売サミットが開幕 加工と外販で商機狙え
これからの農産物直売所で求められるのは、特色ある農畜産物や観光スポットなど地域の資源をブランド化し、内外に売り込んでいく機能を持つことだ。地元に密着しつつ地域外に打って出る、二つの視点を併せ持ちたい。
今回のサミットで講演するのは、農産物直売所を持つ道の駅の代表者らだ。「道の駅うつのみやろまんちっく村」を運営するファーマーズ・フォレストは、クラフトビール醸造などの商品開発や旅行業を展開し、「モノ」と体験型の「コト」の双方で商品開発を進めてきた。地場産物を量販店インショップに卸す他、東京都内で栃木県アンテナショップを開業し、新たな売り先も開拓している。
同道の駅の直売所では、地理的表示(GI)保護制度に登録した在来種ブランド「新里ねぎ」を使ったドレッシングをそろえる。生鮮品の「新里ねぎ」は毎年、出荷解禁日の問い合わせがくるほどの人気だ。加工品となると規格外農産物の活用策として考えがちだが、生鮮品の出荷がない時期も売り場に置けて、ブランド農産物の存在を年間通してアピールできる。規格外といっても手を抜かず、加工してブランド商品に仕上げる姿勢を学びたい。
ただ、農家やJAだけでこうした商品やサービスを開発するのは限界もある。そこで地元の加工業者や飲食業者、デザイン関係の業者などと連携することが、魅力ある商品づくりへの近道になる。
地元の高校や大学とのタイアップも、若者の感性を取り入れられて、保護者を含む幅広い世代に波及効果が望めて効果的だ。
来年に控えた物流問題の解決に向け、「地産地消」の拠点としての機能強化も期待したい。栃木県下野市の「道の駅しもつけ」は、全体の年間売上高が19億円(税別)と、全国の道の駅でトップクラス。2014年からは市民向け宅配事業にも着手。季節ごとの商品カタログは地場産青果や総菜、菓子が充実し、まるでグルメ通販のようだ。高齢者を中心に子育て世帯のニーズにも対応、サービスの良さで固定客をつかんでいる。
県民の特性を紹介するテレビ番組のネタが尽きないように、直売所にはまだ知られていない魅力が眠っている。地元では当たり前の食べ物や風景の価値をあらためて見直し、商機を見いだそう。