[論説]加速する地球温暖化 負の連鎖止める農業へ
WMOの予測は、岸田文雄首相も参加して13日からイタリアで始まった先進7カ国首脳会議(G7サミット)を前に発表された。世界各地の気象データを基に、2024年から28年までの間、パリ協定が定めた世界共通目標の「1・5度以内」を早々と超える可能性が極めて高いと分析。世界各国に対し、「より野心的な取り組み」を促した。
この予測を踏まえ、アントニオ・グテーレス国連事務総長がG7で演説し、近年の異常気象について「気候変動地獄」と表現。各国首脳陣に対し「地獄の高速道路を降りられるかどうかの勝敗は20年代に決する」と警告した。実際、日本でも猛暑や豪雨といった極端現象で土砂災害や農作物への被害が年々深刻化し、食料安全保障の基盤が大きく揺らいでいる。
特に、ブランド米「魚沼産コシヒカリ」産地の一つ、新潟県越後妻有地方は、昨年末からの暖冬に伴う記録的な雪不足で水が足りなくなり、代かきできない状況だ。昨年は生育期の高温障害に苦しんだが、田植え期には水が十分にあった。だが、今年は春から不足している。天水に頼る棚田は今期の作付けを断念する高齢農家が相次ぎ、地区によっては、余った苗が数ヘクタール分にも及んだ。米作りをけん引してきた有数の産地の苦しみは、私たち一人一人の食卓とつながっている。米をはじめ、農業を大事にする国づくりへ転換しなければならない。
国連などの推計によると、世界の温室効果ガス排出量は二酸化炭素(CO2)換算で年間520億トンで、うち日本の排出量は2%に当たる12億トン。一方で、日本のCO2吸収量は農林水産分野の排出量(4750万トン)とほぼ同じ4590万トンとされ、その9割以上が森林(4290万トン)と農地・牧草地(180万トン)が貢献している計算だ。
温暖化を防ぐためには、水田からのメタンや家畜のげっぷ、排せつ物の適正な管理などの規制を強めるだけでなく、環境に配慮した農業をいかに推進し、発展させていくかが鍵となる。
気象庁は、昨年の記録的猛暑につながったエルニーニョ現象が今春までに終息し、厳しい暑さをもたらすラニーニャ現象が秋にかけて発生すると予測する。人間の経済活動が温暖化を生む。こうした負の連鎖を止めるのも、私たちの取り組みにかかっている。