[論説]相次ぐ子どもの事故 絶対農機に乗せないで
事故が起きたのは4月上旬。札幌市に単身赴任している父親が帰省し、茨城県筑西市の親戚の農作業を手伝っていた時に起きた。フォークリフトは本来1人乗りだが、荷物を運ぶ2本の爪部分に6歳の男児ら3人が乗っており、バランスを崩して男児が転落、車体の前方部分で頭を強打し亡くなった。茨城県警は、運転していた29歳の父親を自動車運転処罰法違反(過失致死)の疑いで任意捜査した。
クレーン機能が付いた機械操作やフォークリフトの運転などを農業法人などの従業員が行う場合は、労働安全衛生法に基づく「特別教育」を受ける義務がある。個人経営の農家も、積極的にJAなどの安全研修を受けてほしい。
田植えシーズンが本格化し、田植え機やトラクターに乗りたいとせがむ子らは多いだろう。だが、軽い気持ちで農機に乗せたことが、取り返しのつかない事態となる。子どもを巻き込んだ事故は後を絶たない。日本農村医学会の「こうして起こった農作業事故IV」によると、兵庫県で2008年、64歳の祖父が孫の女児(6)をトラクターに乗せ、発進したはずみで女児が転落、ロータリーに巻き込まれて亡くなった。茨城県では12年、4歳の男児が79歳の曽祖父の運転するトラクターから転落、ロータリーに巻き込まれて亡くなった。いずれも同様のパターンでかわいい孫やひ孫が亡くなっている。この教訓を生かさねばならない。
事故情報を、詳細に分析しているのが北海道だ。道農作業安全運動推進本部の23年度「農作業事故報告書」によると、10歳未満の子どもの死亡事故は20年度が1人(男児)、負傷事故は23年度までの10年間で5人(男児3人、女児2人)。10代の死亡事故は14年度が1人(男子)、負傷事故は過去10年で169人(男子109人、女子60人)に上る。農作業事故というと高齢農家が多いと捉えがちだが、負傷を含めれば、多くの子どもや若者たちを巻き込んだ事故に発展している。農水省は負傷を含めた事故の全容を迅速に集約し、対策の強化に乗り出してほしい。
都会から帰省した家族が田植えなどを手伝う機会が増える時期だけに、「子どもを農機に乗せない」「近寄らせない」を徹底しよう。
合言葉は「かわいい子は、農機に乗せるな」。安全最優先を心がけよう。