[論説]農産物規格の見直し 簡素化し出荷量確保へ
高齢化が進む農業は労働力不足が慢性的だ。埼玉県のJAくまがやは、ネギの契約取引向け出荷で規格の数を減らした。通常は太さで7段階、長さで3段階と規格が細かかった。そこで選別の負担を減らそうと2019年度から契約取引では規格を四つにまとめた。固定価格での買い取りも魅力で希望者が増え、23年度の出荷計画量は系統出荷全体の3割強に高まった。
スーパー向けの出荷も、簡素化が進む。愛知県のJA豊橋は、ミニトマトの一部のブランドで規格を5段階から3段階に減らした。細かく大きさを選別して出荷していたが、店頭ではサイズ混合でパック詰めされ、販売する例があったためだ。
形や大きさのそろった青果がきれいに並んでいる様子は見栄えが良く、国産の品質基準の高さを物語る。だが、ブランド化を進める中で必要以上に細かい基準にしていないか。農産物の生産縮小に小売りも危機感を強めている今、実需者を巻き込んで規格の見直しを進める時だ。
特に国産の不足感が強いのが果実だ。ミカンやリンゴは昨夏の猛暑で出荷量が減り、品薄高が長期化する。小売りが求める「市場出荷してほしいサイズ」の許容量は広がっている。スーパー大手のイオンは、従来は規格外となって市場流通が難しかった小ぶりのミカンも青果として販売、甘さで人気を集めている。
旬を迎えたサクランボは今年、主産地の山形県で双子果の発生率が高く、規格外が増え、出荷量が平年を下回る見通しだ。双子果は生産者にとって摘果の手間が増える困りものだが、2個がバランスよく生育したものを「かわいい」と感じる人も中にはいる。同県内では双子果を「訳あり品」として販売する動きが出ているが、単にB品や規格外とせず「仲良く育った双子ちゃん」などネーミングを工夫することで、双子果の価値を高められる可能性はある。
トラック運転手の労働時間規制が強化された「物流2024年問題」を踏まえ、産地は、パレット出荷に向いた段ボール箱に変更するタイミングを迎える。同時に規格の簡素化も考えてもらいたい。
温暖化は、農産物の出荷減に拍車をかける。規格を見直し、売れる商品を増やすことは、長い目で見れば食料自給率の向上にもつながる。