[論説]線状降水帯の頻発 豪雨時の見回りは厳禁
気象庁は5月21日に沖縄と奄美、6月8日に九州南部、9日に四国、17日に九州北部が梅雨入りしたと発表。いずれも平年より遅く、特に九州北部は平年より13日遅れとなり、昨年より19日も遅れた。関東など各地の梅雨入りも、大幅に遅れる見通しだ。
梅雨入りしたところで警戒すべきなのは長時間降り続く豪雨だ。線状降水帯は長さ50~300キロ、幅20~50キロほどの積乱雲が線状に連なり、数時間にわたって同じ場所で激しい雨を降らせる。
以前、梅雨末期の豪雨で被害を受けた九州のJAでは、対策が進んでいる。昨年7月、福岡県のJAにじ田主丸支店とJAくるめ東部支店では、床上まで浸水する豪雨被害を受け、業務休止を余儀なくされた。そこで東部支店は、正面玄関やATMなど6カ所に、必要に応じて止水板を設置できるようにした。田主丸支店は止水板の設置訓練を行い、すぐに水害を防ぐ行動がとれるようにした。
JA筑前あさくらでは、柿やアスパラガスの部会員らが、被災農家を支えようと流入した土砂の撤去やハウスの復旧を手伝った。災害時こそ、協同の力が試される。
今年は梅雨末期を待たずに、梅雨入りから線状降水帯への警戒が必要だ。九州南部では18日にかけて線状降水帯が発生する恐れがあるとして、九州の各気象台が緊急会見を開き、注意を促した。
日本気象協会によると、梅雨入りが遅いからといって、梅雨明けも遅くなるとは限らないという。今年は前線が一気に北上し「短期集中型になる可能性がある」とみる。
気象庁は5月から、線状降水帯による大雨の発生を半日前に予測し、発表している。都道府県単位を基本に全国59ブロックで運用する。同庁気象研究所によると、2023年までの15年間に国内で発生した線状降水帯のうち、午後10時台から翌朝午前6時台にかけてが全体の半数を超えていた。就寝時の夜から翌朝にかけて警戒が必要となる。
降れば命の危険を感じる土砂降り、晴れれば熱中症になるほどの酷暑──。温暖化が進み、年々気象が極端化している。特にこの時期、農家が命を落とすのは風雨が激しい時の田んぼの見回りだ。徒歩でも車でも危険で絶対にやめてほしい。自然の猛威を過信せず、ためらわず避難するなど命を守る行動を起こそう。