[論説]男女共同参画と健康 誰もが働きやすい国に
同白書は、男性特有の病気は50代以降で多くなる傾向に対し、女性特有の病気は20~50代の働く世代に多く、「女性と男性では、健康課題の内容も課題を抱えやすい時期も異なる」と指摘。「女性がキャリアを形成していくためには、女性特有の症状を踏まえた健康への理解・支援が求められる」と提起した。
男性の健康課題も見過ごせない。特に深刻なのが心の問題だ。男性の自殺者数は女性の2倍程度で、特に40、50代で多い。自殺の原因・動機を見ると、「経済・生活問題」「健康問題」に次いで「勤務問題」が上位に入った。23年の農林漁業の自殺者は382人で、男性は339人と約9割に上る。農業経営の悪化が影響しているとみられ、国を挙げた対策が求められている。
男性は仕事、女性は家庭といった役割分担意識が依然として根強いことも課題だ。6歳未満の子を持つ共働き世帯で、平日の生活時間を見ると家事関連は妻に、仕事は夫に偏っている。総務省によると、農林漁業に従事する女性の1日の家事・育児時間は計2時間57分と、男性の26分に比べて6倍以上長い。女性が活躍できる社会にするためには、家事などの負担を公平に分かち合う必要がある。
こうした戦後からの慣習が、女性の社会進出を妨げてきた。それだけではない。男性も長時間労働を強いられ、健康を害し、過労死につながっていく。今こそジェンダー平等を実現し、誰もが働きやすい社会に転換すべきだ。
今月、世界各国の男女平等度を示す「ジェンダーギャップ指数」の24年版が世界経済フォーラムから発表された。日本は、総合ランキングで調査対象の146カ国中118位と、過去最低だった前年から順位を七つ上げた。だが、先進7カ国(G7)では依然として最下位。女性の管理職や国会議員比率の低さ、賃金格差が要因となっている。特に政治、経済の分野で男性優位社会からの脱却が急務だ。
取り入れたいのは「ダイバーシティ(D)&インクルージョン(I)」という考え方だ。多様性を認めるだけではなく、組み入れるという意味があり、人材確保や離職率低下、従業員満足度の向上、新規事業の創出が期待できるという。農家や農業法人、JAなどあらゆる職場で意識を変えることが求められている。