[論説]関心高まる有機給食 課題共有し学び合おう
2023年6月に設立した全国オーガニック給食協議会によると、設立初年度で会員数は自治体やJA、生協、流通、市民などの団体が109、個人246と増えている。設立前に開いた全国オーガニック給食フォーラムにはオンラインを含め約4000人が参加し、関心の高さがうかがえる。協議会代表理事の太田洋・千葉県いすみ市長は「自治体ごとに行われている取り組み事例の共有が必要」と先行モデルの創出を目指す。
「有機給食」の先進地、いすみ市に学ぶ自治体は多く、長野県松川町もその一つ。同町の場合は、増える遊休農地が、取り組むきっかけとなった。有機栽培後の販路として学校給食なら需要が一定量(小・中学校3校で約1100食)あり、栄養教諭らも地場産を望んでいることから着手した。ポイントは、①指導者を得て品目別の栽培マニュアルを作成②利用が多い米と野菜の5品目に絞り、量を確保③有機食材の価格は町が間に入り、過去の平均値を基に定額に決定――する点だ。
いすみ市への視察で「指導者がいなければ、品質や量が必要な有機給食は無理だと感じた」(松川町産業観光課)ためで、価格保証も「農家にメリットがなければ、有機栽培は広がらない」(同)と考えたからだ。
給食に携わる人が、定期的に会合を開くことも大事な点だ。「ゆうき給食とどけ隊」(生産者)と「つくり隊」(栄養教諭や調理師)、町、納入業者らが月1回話し合い、規格や量、品質、価格の課題を一つ一つ解決している。町はオーガニックビレッジを宣言して、国と県の事業を活用し、24年度は給食費無償化へ約7100万円の町予算を計上したことにも注目したい。
規模の小さい市町村だからこそ、「有機給食」の実践が課題の解決につながり、持続可能な地域をつくる。旬の地場産農産物を地元で食べることで地産地消や、自給率アップ、農家の所得向上、遊休地の解消、環境保全、質の高い食農教育――などが期待できる。
政府は、改正食料・農業・農村基本法の中で、「環境との調和」を新たに掲げた。有機給食の拡大は、地域の環境と調和した持続可能な農業の実現につながる。さらに「有機給食を実践するまち、むら」であることが、移住の決め手になる可能性がある。