[論説]有機農業の拡大 多様な認証制度活用を
有機農業の取り組み面積は2万6600ヘクタール(2021年度)で、うち有機JAS認証を取得した農地の割合は57・5%。認証制度の完全施行は01年度で、19年度になって初めて認証面積が5割を上回った。認証には費用や手間がかかるためで、認証取得が壁となって有機農業に踏み切れないという声もある。
一方、有機農業の先進国では、信頼関係に基づく直接取引や学校給食などの公共調達、地域の消費者や生産者など多様な人が参加し、小規模な単位で有機農業を承認するPGSという仕組みがある。国内にも、オーガニック雫石PGSグループがその業務を運営している。国際有機農業運動連盟(IFOAM)は、第三者機関による認証と並ぶ仕組みとして位置付けており、インドやブラジル、タイなどで導入が進んでいる。農水省は50年に有機農業の取り組み面積100万ヘクタールを目標に掲げるが、PGSなどの取り組みも積極的に活用したい。
農水省が認める「オーガニックビレッジ」は、全市町村の7%となる124市町村に増えた。同ビレッジを宣言した静岡県藤枝市は23年度、市内の全ての小・中学校の給食で有機米を週3回提供、24年度は週5回に増やす。環境保全型農業直接支払交付金を活用する市内の農家5人から6300キロの有機米を調達する計画だ。「学校給食をきっかけに、子どもから保護者に、さらには市民に利用を広げたい。学校給食は自治体ごとで実施状況は異なるが、成功事例・課題を共有したい」(農業振興課)という。
市民レベルで有機農産物を広める運動は活発だ。名古屋市のオアシス21オーガニックファーマーズ朝市村は、毎週土曜日に朝市を開いて20年。全ての出店者が有機JAS認証を取得している訳ではないが、どんな栽培方法を取り入れているのか聞くことで、顔の見える信頼関係を築いている。吉野隆子代表によると、利用者の8割がリピーターという。朝市では適正な価格で売買ができ、持続可能な農業につながっている。毎週参加する利用者は「こうした朝市が広がってほしいが、どこで開かれているのか、探すのは大変」と指摘する。
有機農業の実践を加速させるためには、有機JAS認証に加え、PGS制度や公共調達、朝市など多様な取り組みを進める必要がある。