[論説]脱炭素社会の実現 生ごみの堆肥化推進を
環境省は、2050年に温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けて、新しい国民運動として「デコ活」を掲げた。二酸化炭素(CO2)を減らす(DE)、エコな活動でデコ活という。
食については「感謝の心、食べ残しゼロ」を目指し、「地元産の旬の食材を積極的に選ぶ」ことを決めた。6月現在、個人を含めて1603の企業・団体などが、デコ活の応援団となっている。
国民運動であるならば、国民一人一人が気軽に参加でき、誰でも実践できる脱炭素活動でなければならない。その点、堆肥化(コンポスト)はうってつけだ。だが、同省の推進するデコ活の中に、生ごみの堆肥化は含まれていない。NPO法人生ごみリサイクル全国ネットワークの福渡和子副理事長は「水分を多く含んだ生ごみの焼却は多くのエネルギーがかかり、大量のCO2と水蒸気、熱を出すため、温暖化を加速させる」と指摘する。
財政難に苦しむ自治体でごみ処理費用の削減が課題となる中、国を挙げて堆肥化を進める必要がある。家庭用の生ごみを微生物の力で分解・発酵させて堆肥にすれば、焼却処理のコストが省け、環境負荷も低減できる。堆肥の投入で良質な土となり農産物の栽培に活用でき、資源の循環利用につながる。
参考にしたいのは、神奈川県川崎市の取り組みだ。市は21年度から食品リサイクルを推進する「栄養循環コミュニティ創出プロジェクト」を実施。協力農園が、各家庭で作られた堆肥を使って野菜を栽培。収穫した野菜は、堆肥を提供した市民に無料で配布。野菜の販路拡大につながり、堆肥を提供した市民は地場産の農産物を入手できて“栄養循環”が実現した。
農水省によると22年度の家庭系の食品ロス量は、前年度に比べ3%減の236万トン。環境省が、食品ロスを削減したくない理由について調査したところ「環境への効果が分からず、自分1人が取り組んでも意味がない」(50%)という回答が最も多く、次いで「実施の方法が分からない」(35%)、「手間がかかる」(20%)、「メリットを感じない」(5%)となった。
燃やさず堆肥化することで、地域の資源が循環し、脱炭素につながる。国を挙げて堆肥化を進める必要がある。