[論説]西洋野菜の国産化 産地開拓し周年供給を
高齢化に加えて少数世帯や共働き世帯の増加を受け、カット野菜の売り場が広がる。酷暑が続く中、火を使わないサラダ向けの野菜需要は高まる。近年、レタスと一緒に袋に入っているのが、紫色が特徴のイタリア発祥野菜「ラディッキオ」。水分が少なくドレッシングをかけてもへたらず、ボリューム感があり、中食、外食需要が増えている。
生産面でも虫がつきにくく、肥料がほとんど不要で作りやすい。キャベツ産地と競合せず、中小規模農家や個性派野菜を求める直売所、洋食向きの野菜だ。小さな面積で安定した収益を見込め、魅力を感じている農家は多い。
西洋野菜の国産化に力を入れるトキタ種苗によると、「ラディッキオ」はこれまで米国やメキシコから年間2000トンを輸入していたが、政情不安やコンテナ不足、円安、燃料高騰などで輸入は停滞しているという。一方、国産ラディッキオは引き合いが強い。生産面積は年々増加しシェアも伸ばしている。同社は栽培指導などを充実させ、国内のレタス面積の7%に当たる1600ヘクタールまで生産を増やす目標を掲げる。
国産化を進めるには、産地から流通、消費に至るまでの連携が欠かせない。先駆けはさいたま市の「さいたまヨーロッパ野菜研究会」だ。若手農家や種苗会社、青果卸、レストランシェフらで構成し、地域内のネットワークを作り普及に力を入れる。2013年に発足し、現在は70種類の西洋野菜を生産・販売する。14年からは市内の学校給食に採用され、18年には全校に広がった。青果卸などと連携し、実需からの要望に応える仕組みを構築したのが特徴だ。
中山間地を抱える茨城県のJA常陸は、約20戸の農家が10種類以上の西洋野菜を1・5ヘクタールで生産する。JAは作業の軽労化と需要が見込めるとして作付けを推進している。
こうした地域のネットワークが全国各地にできれば、西洋野菜の国産化が広がり、需要の底上げにつながる。個性派野菜だけに市場の値動きに左右されず、農地が限られる都市農業や、中山間地域での農家の所得向上も見込める。
課題は、西洋野菜をどう食卓に根付かせるかだ。食べ方の提案や、国内で生産する意義や価値を発信する必要がある。猛暑対策も欠かせない。品質を維持し、安定供給できる体制を整えたい。