[論説]牛の暑熱対策 換気と送風を効果的に
今年は7月に入り、各地で体温を超える酷暑となった地域が続出した。乳牛は気温20度を超えるとストレスを感じるとされる。ストレスが高まれば餌を食べる量が落ち、乳量が減るだけでなく、繁殖成績の悪化などにもつながる。
酷暑だった2023年も、夏場の乳量が全国的に低下し、中央酪農会議がまとめた同年8、9月の受託乳量は過去20年間で最も少なかった。コロナ禍で需給のバランスが崩れ、さらに飼料高などが重なって離農は加速、23年度の受託乳量は前年比3・5%減に落ち込んだ。
専門家は、牛の暑熱ストレスを緩和する基本対策に①牛舎内の「換気」②風を作り広げて送る「送風」――を挙げる。送風機で牛の体に風を当てても、牛舎内の熱気をかき混ぜるだけで、冷却効果は期待しにくいという。換気にも十分留意し、新鮮な空気が畜舎に入ってきているかも気を配る必要がある。
夜間の換気と送風をポイントに挙げる声もある。夕方以降も送風機を稼働し続けるなどして、日中に上がった体温を翌朝までにしっかり下げることが重要という。
注意したいのは、送風機の配置だ。畜舎の天井周辺の空気は、日差しで熱くなった屋根に近いため、高温になっている。送風機の位置が天井に近過ぎて、熱風を牛に当てていないか、確認してほしい。屋根への反射資材や断熱資材の設置、散水も有効だ。発汗量の多い牛の肩や首にしっかりと風が当たるよう、送風機の角度も調整しよう。
細かい霧で牛を冷やすミストも活用したい。ミストで牛をぬらすと、水分が蒸発する際に熱を奪うため、体表面温度を下げる効果がある。ぬれた体表面に風を送れば、体感温度の低下が促進される。
ただ、牛にとって湿度もストレスの要因になる。畜舎内が高湿度の場合、ミストでさらに湿度を上げてしまう可能性もある。その場合は、牛の体を直接ぬらし、風を当てるのが有効との指摘もある。
昨年の猛暑下でも乳量が安定していた酪農家は、餌やりを1日4、5回に分け、牛の食い込みを良くしていた。給餌作業の負担を抑えようと、家族で分担しているという。
農作業中に農家が熱中症で亡くなる事故も相次いでいる。水分や塩分を小まめに補給し、日中は休むなど、命を最優先にした対策が必要だ。