[論説]相次ぐ気象災害 命と農業守る実効策を
温暖化が進み、気象災害による死者は後を絶たない。7月下旬の線状降水帯の発生で記録的大雨となった山形県酒田市では、86歳の女性が亡くなった。避難指示の発令後、強い雨が降る中、歩いて避難中に行方不明となり、6日後に発見された。
高齢者をはじめ地域住民の命を守るには、安全な場所まで無事、避難できるようにする必要がある。政府や自治体は、災害の度合いによって定めた警戒レベルや、避難指示の発令などを通じて安全確保に努めているが、発信の仕方に改善の余地はないか、不断の検証を求めたい。
前倒しの避難を促そうと、気象庁は線状降水帯の「半日前予測」を導入した。府県単位で公表しているが、今回の酒田市を含む山形県で発生した線状降水帯は、半日前予測ができなかった。同庁によると発生範囲が狭かったのが原因で、そうした事態は今後も起こる可能性はあるという。
台風10号も接近中で、線状降水帯の危険も各地で高まっている。土砂災害などの危険性がある地域の住民は特に警戒が必要だ。政府は前倒しの避難へ、半日前予測だけでなく関連する気象、防災情報をより丁寧に分かりやすく発信していくべきだ。地域住民も日頃から気象情報を集め、事前に避難方法を確認し、防災用具を備えてほしい。
災害が発生すれば、被害を防ぐのには限界がある。家屋はもちろん、農地やトラクター、コンバインをはじめとした農業機械、農業関連施設が浸水被害に遭うことも多い。農業に欠かせない各種インフラや設備だけに、離農者を出さないための迅速な復旧支援が不可欠となる。
記録的な大雨に見舞われた山形県酒田市でも複数農家が機械などを失った上、カントリーエレベーターが故障し、被害は広範囲に及んでいる。
産地や農業経営の再起が遅れれば遅れるほど、離農につながる。農業の早期再開に向けて政府には、激甚災害指定に基づく農地や共同利用施設などの復旧事業の国庫補助かさ上げや、浸水した農業機械の導入支援などを迅速に進めてほしい。
地震や大雨などの災害が頻発する今、どの産地でも被災するリスクはある。そうした状況下でも、経営を立て直せると確信できる環境を整えることが重要だ。国民と国土を守る政府支援が求められる。