[論説]需要増える国産米粉 生産支援で水田生かせ
2023年度の食料自給率はカロリーベースで38%と低迷が続く。国内で食料を最大限賄う能力を示す食料自給力指標も、芋類をできるだけ作付けしても1人1日当たり前年度比24キロカロリー減の2362キロカロリーと過去最低となった。人手不足で生産基盤は弱体化し、食料供給リスクは高まる。
一方、輸入小麦の代替として国産米粉への期待は高まっている。小麦の主要輸出国であるロシアとウクライナの紛争や、為替変動に惑わされない国産米粉の価値を高め、生産・消費ともに底上げしたい。価格も業務用小麦粉が1キロ当たり130円前後、米粉は同140円からと差が縮まってきた。小麦アレルギーの人もグルテンフリーの米粉なら食べられて吸油率も低い。そうした特性を発信したい。
農水省も支援に乗り出す。同省は7月から、農産加工品の輸入関税引き下げの影響を受ける事業者を支援しようと、改正特定農産加工業経営改善臨時措置法を施行、国産米粉への切り替えなどを後押しする。輸入小麦粉から国産米粉に置き換える「特定農産加工業者」に対し、低利融資や事業所税の一部控除の特例も受けられるよう支援する。
課題は、主食用米と比べ、米粉の生産は農家手取りが低いことだ。収量増に向け、米粉向けの専用品種の導入や加工体制の強化が必要だ。
同省は、今春から部局横断で有志11人による米粉の利用拡大を呼びかけるプロジェクトチーム「米粉営業第二課」を結成した。1年間限定のチームだが、米粉の魅力を食品企業などに広く売り込み、需要拡大を目指す。
米粉の利用が進めば、国産振興にもつながる。22年度の需要量は約4万1000トンと、09年度比の約8倍になった。23年度は需要量を約5万3000トンに拡大したが、生産量は約4万トンと需要に追いついていない。同省は24年度の需要を6万4000トン、30年度は13万トンとする目標を掲げるが、需要に見合う生産支援が鍵となる。
スーパーなどでは国産の米粉が並ぶようになった。今後、輸入小麦の価格が下がっても、国産米粉を一過性のブームで終わらせてはならない。
6月末時点の農家の作付け意向では、米粉用米の生産は19道府県で増加傾向にある。国内外で需要が見込める米粉にも目を向け、水田の有効活用につなげよう。